プロ野球「大物メジャー選手」獲得増に期待の訳 コロナをきっかけに外国人選手事情が変わるか

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一方で21世紀に入ってから、MLBの野球は劇的に変化した。野球を統計学的に分析する「セイバーメトリクス」をMLB球団が取り入れ、各球団がデータアナリストを雇用するようになる。

記録の蓄積だけでなく、球場にはトラッキングシステムなどの計測機器が設置され、選手のプレーは瞬時にデータ化される。このデータに基づいてさまざまな革新的な作戦、戦略が打ち出された。

パイレーツは打者ごとの打球の傾向に基づいて、内野手を極端な位置に守らせる「守備シフト」を導入。晩年のイチローなどもヒット性の打球を数多くアウトにされた。これに他球団も次々追随。

打者は「守備シフト」を打破するために、ホームランを狙うようになる。データによって「どの角度にどのくらいのスイングスピードでバットを振ればホームランになりやすいか」が割り出され、打者は意識的にそうした打撃をするようになる。「フライボール革命」だ。さらに投手は自分の投球の軌道、回転数、回転軸のデータを分析し、打者が最も打ちにくい変化球を自らデザインするようになった。

「日米の格差拡大」を象徴するもの

わずか10数年でMLBの野球は劇的に変化し、日本との差は大きく開いた。それを象徴しているのが2017年WBCの準決勝だ。日本は1-2でアメリカに惜敗したが、筒香嘉智(当時DeNA、現在はレイズ)、中田翔(日本ハム)、坂本勇人(巨人)ら主力打者は、アメリカのメランソン、ニシェック、グレガーソンなど一線級の救援投手に手も足も出なかった。

近年、西武の菊池雄星、牧田和久、秋山翔吾、巨人の山口俊、DeNAの筒香嘉智などNPBから移籍したスター選手が、MLBで苦戦するケースが増えているが、これも「日米の格差拡大」を象徴しているのではないかと思う(補足すればダルビッシュ有、前田健太などMLBで活躍している選手は、アメリカに来てから進化した選手だといえよう)。

しかしMLBの一線級選手の多くは年30億円、複数年で100億円を優に超す年俸を得ている。最高年俸が6億前後のNPBで、ジャスティン・バーランダー、トレバー・バウアー、ムーキー・ベッツのような超一流の選手を見ることはかなわない。日米の格差は広がる一方だと思われていた。

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