日本人女性の自殺がコロナ禍で増えている背景 経済的、精神的な影響が女性たちを襲っている

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そうした感覚が鬱の引き金となり、自殺未遂につながったと言う。精神病院でしばらく過ごして治療を継続した後、ナオさんは自信を取り戻し、週4日間の仕事を見つけた。出版社のデジタル部門の仕事だ。そして現在は、仕事量をコントロールすることができているという。

過去にも日本の自殺率は、経済危機時に急増している。1990年代のバブルの崩壊後や、2008年の世界的景気後退後もそうだった。

過去の経済危機では、職を失うなどの影響を最も受けたのは男性で、男性の自殺が増えていた。歴史的に見ると、日本では男性の自殺件数は女性の件数を上回っており、その比率は少なくとも2対1となっている。「彼らは仕事や財産を失ったことに絶望を感じていた」と、社会疫学を専門とする大阪大学国際公共政策研究科の松林哲也教授は語る。

命を絶った女性の3分の2以上が失業中

松林教授によると、昨年失業率が最高となった都道府県では、40歳以下の女性の自殺の増加が最も多かったという。2020年に命を絶った女性の3分の2以上が失業中だった。

40歳以下の女性では、自殺は昨年25%近く上昇した。また昨年、命を絶った女子高生の数は2倍に上っている。

冒頭の橋本さんの場合、恋人に経済的に依存しているという不安が絶望感につながっていた。個人トレーナーとして勤務していたジムが営業を再開したとき、橋本さんは復職できるほど感情的に安定しているとは感じていなかった。そして、感情的、経済的に恋人に依存していることに罪悪感を感じたという。

橋本さんは勤務先で、建設業界で働く男性(23)と出会った。男性は橋本さんの顧客だった。自分の鬱がどうにもならなくなってきていることを打ち明けたのは、2人が付き合い始めてからわずか3カ月後のことだった。治療費を払うことができず、ひどい不安発作にも苦しめられた。

自殺未遂をしたとき橋本さんは、これで恋人が自分の世話をする責任から解放できる、としか考えることができなかった。「彼の重荷を取り除きたかったのです」と橋本さんは言う。

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