日本人女性の自殺がコロナ禍で増えている背景 経済的、精神的な影響が女性たちを襲っている

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この状況は日本にとっての長年の課題をさらに強めている。「我慢すること」が美とされる社会の中、メンタルヘルスの問題について語ることは依然として難しい。

社会的結束にもとづく文化や、マスク着用・政府要請に対する社会的プレッシャーが強い文化は、コロナ禍ストレスを増幅させる要因にもなっている。老人や子どもの世話をするのはまず女性であると見なされがちで、これができなかったり、コロナウイルスに感染してしまった場合、世間体が悪くなるおそれもある。

「女性がウイルス予防の重荷を背負っている」と、特定非営利活動法人メンタルケア協議会の西村由紀理事は語る。「女性は家族の健康の面倒を見なければならず、清潔面の管理もしなければならず、それができない場合は恥をかく可能性がある」。

感染者が責められやすい風潮

広く報道された情報によると、30代の女性がコロナウイルス感染からの回復後に自宅で命を絶ったという。日本のメディアは彼女の書き置きに飛びついた。そこには他人に感染させて迷惑をかけてしまった可能性に対する苦悩がつづられていた。一方、専門家は恥辱感が彼女の絶望を後押ししていたのかについては、疑問を投げかけている。

「残念なことだが、現在の風潮では被害者を責めがちだ」と、早稲田大学で自殺の研究をしている実証政治経済学の上田路子准教授は語る。上田准教授は昨年の調査で、40%の回答者がウイルスに感染してしまった場合の社会的なプレッシャーを心配しているということを見い出した。

「もしあなたが "私たちの一員" でないのであれば、私たちは基本的にあなたをサポートはしないし、メンタルヘルスの問題を抱えている人は私たちの一員ではない、ということなのです」と上田准教授は指摘する。

専門家たちは命を絶つ芸能人や映画が昨年相次いだことが、模倣的な自殺の連続に拍車を掛けたのではないかとも懸念している。受賞歴のある人気女優の竹内結子さんが9月下旬に亡くなった後、その後数カ月の間に自らの命を絶った女性の数は前年比90%近く急増している。

竹内さんの死後間もなく、ナオさん(30)はブログの執筆を始めた。彼女は長きにわたって鬱や摂食障害と闘っており、その歴史をつづるためだ。ナオさんは3年前の自身の自殺未遂について率直に書いた。

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