日本人女性の自殺がコロナ禍で増えている背景 経済的、精神的な影響が女性たちを襲っている
メンタルヘルスの苦悩についてこのようにオープンに語ることは、依然として日本では比較的珍しいことである。芸能人の自殺によってナオさん(名字は本人の希望によりプライバシー保護のため非公表)は、パンデミックの最中に、感情的に最悪の状態に陥ったら自分はどういう反応をするだろうか、と考えたという。
「家で、1人で過ごしていると、社会から疎外されていると強く感じます。そしてその感覚は本当に苦しいものです」と、ナオさんは語る。「もし自分が今そういう状況にいたら、と想像してみると、自殺未遂はもっと早期に発生していたと思います。そしておそらく、自殺に成功してしまっていただろうと思います」。
「心の病」につきまとうタブー
自身の体験についてつづったナオさんは、今では結婚しているが、絶望を感じている誰かの助けになりたかったのだと語る。多くの人たちが友人や仕事仲間から隔離されている時期であれば特にそうだ。
「誰かが自分と同じような状況を経験したことがある、あるいは、経験中であることを知り、そして専門家の助けを求めて実際に役立ったということがわかれば、自分も同じようにしよう、と励ませると思ったのです」と、ナオさんは話す。日本で心の病につきまとうタブーを取り除く手助けをしたいとナオさんは言う。
ナオさんの夫はコンサルタント会社で初めて彼女と出会ったとき、ナオさんがいかに長時間労働や過酷な職場の風潮に苦しんできたかを見ていた。その後ナオさんは仕事を辞め、浮き草のようになってしまったと感じた。
コロナ禍で女性のほうが不釣り合いに仕事を失い、苦しんでいる。こうした女性たちの多くは、レストランやバー、ホテルといった新型コロナの影響を最も受けている業界の従業員である。
働く女性の約半数がパートタイムや契約社員であり、事業が停滞しているときには企業は真っ先にそうした従業員を解雇する。昨年1〜9月までに約144万人のそうした人々が職を失った。半数以上が女性だ。
ナオさんは治療を受けるために、自らコンサルティング会社を辞めたが、今後は家賃が払えなくなる、といった不安にさいなまれたことを覚えている。ナオさんと現在は夫である婚約者が結婚の計画を前倒しにすると決めた時、ナオさんの父親は彼女が「わがままだ」と責めた。「すべてを失ったと感じました」とナオさんは振り返る。