日本人女性の自殺がコロナ禍で増えている背景

経済的、精神的な影響が女性たちを襲っている

大阪に住む橋本なずなさんは昨年の7月、自ら命を絶とうとした(写真:Hiroko Masuike/The New York Times)

昨年の春に日本が新型コロナウイルスへの対抗策を強化してから間もなく、橋本なずなさんはパニック発作に苦しめられるようになった。橋本さんが個人トレーナーとして働いていた大阪のスポーツジムは業務を停止し、友人たちは政府の要請に従ってステイホームしていた。

孤独になることをおそれて、橋本さんは付き合ってほんの数カ月の男性に電話をして、来てくれるよう頼んだ。そのときでさえ、橋本さんは涙が止まらないことがあった。橋本さんはその年の初めに鬱の診断を受けており、そのことも悪循環となった。「私はもともと小さな世界に住んでいましたが」と、橋本さんは語る。「さらに小さくなってしまったと感じました」。

7月になる頃までには、橋本さんはほかにどうしようもないと感じ、自殺を試みた。恋人が橋本さんを発見して救急車を呼び、一命を取り留めた。今、橋本さんは自分の経験を公に話している。日本でメンタルヘルスについて語ることに付きまとう悪いイメージを払拭したいと望んでいるのだ。

女性の自殺件数は深刻なほど上昇

パンデミックが日本の多くの地域を襲う中、女性に対するプレッシャーが強まっている。多くの国でそうであるように、この国でもより多くの女性が職を失っている。

東京では、約5人に1人の女性が一人暮らしをしており、外出を自粛し、高齢家族を訪れてはいけない、という強い要請が孤独感をより加速させている。家庭を持つ女性も、家事や子育てにおける根深い不平等に苦労したり、DVや性的暴行の増加に苦しめられたりしている。

パンデミックの精神的および身体的な苦痛により、日本人女性の自殺件数は深刻なほど急増している。昨年、日本では6976人の女性が自ら命を絶っており、2019年に比べ約15%増えた。10年以上ぶりとなる前年比増加だ。

それぞれの自殺や自殺未遂の背景には一人ひとりの複雑に絡み合う事情に根ざした悲劇がある。しかし、女性の自殺者数は昨年7カ月連続で拡大しており、世界最高レベルの自殺率の減少に努めてきた政府関係者やメンタルヘルスの専門家の懸念するところとなっている(昨年の自殺者の数は男性のほうが多かったが、男性の自殺者数は2019年からは減少している。男女合わせると、自殺者数は4%弱の増加となった)。

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