乙武洋匡「万人に求められる人になる必要ない」 高濱正伸と語り合った教職、子育て、教育論

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あの膨大な業務の量を考えたら、そういう思考になるのも無理はないですよ。だから、学校を、職員室をチャレンジに前向きな組織に改革していくなら、「子どもたちのために頑張ろう」みたいな根性論ではなく、どうやってムダな業務を減らしていくかという改革が先決だと思いますね。例えば校務分掌といって、授業を教えたりする以外に、学校経営をしていくうえで教員が分担で請け負う仕事というのがあるんですね。

私は学校のホームページを更新する担当だったんですけど、それが1日1時間くらいかかるんです。子どもたちが帰った後、職員室でほかの学年の先生のところを回って、「今日は何かトピックスあります?」と聞いて、「こういうのがありますよ」と言われたら、そのときの写真をいただいたり、取材して数行の文章にまとめたりして短い記事にする。

その作業も教員に支給されているパソコンはイントラネットなので、インターネットにつながっていないんですよ。だから、2階にあるパソコン室の鍵を開けてパソコンを起動し、更新作業をして、副校長に確認してもらうために、わざわざ1回プリントアウトして職員室に持っていく。一発OKが出ればいいですけど、ちょっとでも修正を指示されれば、また2階に行って、パソコンで修正して、プリントアウトして――。

一概に教師を責めるのも間違い

最低でも1時間、下手すると2時間近くかかることもあるわけです。これ、教員がやる必要ありますかね。例えばこれを業務委託で外部の方にお願いするとか、地域のボランティアの方にお願いするとかできれば、その分の2時間、教員は授業準備や子どもたち、保護者のみなさんと向き合う時間に充てられるのです。なので、一概に教師を責めるのも間違いで、仕組みを変えていきましょうという話ですね。

高濱:仕組みづくりの問題ですね。僕は17、8年、外から公立学校を見てきましたけれど、結局政治マターだなって思うんですよね。

乙武:おっしゃるとおり。結局、予算がなければ、仕組みも変えづらい。

高濱:仕組みをしっかり変えるほうが、絶対に早い。先生たちが、「どんどんやらなきゃいけないんだな」っていう仕組みになっちゃえば、やる人たちだと思うんです。いまは「やらないほうがいい」っていう仕組みですもんね。

乙武:まさに、おっしゃるとおりです。

高濱:そういう経験を踏まえて、最近の教育の世界に対して言いたいことって、山ほどあると思うんですけど。

乙武:めちゃくちゃありますね(笑)。

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