乙武洋匡「万人に求められる人になる必要ない」 高濱正伸と語り合った教職、子育て、教育論

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乙武:親に言われて、好きでもない勉強をして、ひとまず日本の高校を出ました、大学を出ましたという子と、好きなことを突き詰めて、やるだけやって、でもダメだった、だけどスペイン語と世界中の仲間を獲得したよという子と、どっちのほうがリスクが高いですか?

そう考えたときに、私は日本にとどまらせることのほうがリスクが大きいと感じてしまうんですよね。

高濱:そうですね。

乙武:気をつけなければならないのはわれわれが育ってきた時代と、子どもたちがこれから生きていく時代では価値観が違ってくるということです。私たちの時代は、バブルが弾けたとはいえ、まだ経済は右肩上がり、人口も伸びていく時代でした。そういう時代は、なるべくレールから外れずに、みんなと同じ道を歩いていれば安定した人生が待っていた。いい大学を出て、いい企業に入って、長年いればいただける給料が増えて、そしてマイホームが持てました。めでたし、めでたしという時代です。

ところがこれから来る時代は、真逆なんですよ。経済は右肩下がり、人口も減っていく。仕事もAIやロボットに取って代わられていく可能性が出てきたときに、どういう人材が求められるようになっていくのか。これは絶対に基準が変わってきます。これまでは「みんなと同じ」であることが安心材料だったのが、今後は「みんなと同じ」がリスクになってくる。なぜか?「おまえじゃなくても、別の人材でいいんだ」と、簡単に取って代わられてしまうからです。

万人に求められる人材になる必要はない

これからの時代、大事になってくるのは、その人にしか見えていない景色があること、その人にしかないアイディアがあること。これが強みになってきます。そういう人材に育てるには、無理に高校や大学まで行かせるのではなく、本人が望むなら早くから海外で武者修行させる。このほうが、絶対にオリジナリティが生まれるわけです。

万人に求められる人材にはなりにくいと思いますよ(笑)。でも、万人に求められる人材になんてなる必要ないですから。私たち親世代が生きてきた時代のモノサシを子どもに当てはめないように。これは、ものすごく気をつけなければと思っています。

高濱:お母さんが子どもに入社してほしいと思っている企業って、30年後にはつぶれているかもしれない。大体この繰り返しなんです。大企業のすべてがそうではないですが、なぜかというと、その企業には、大企業病の人ばかりが集まって、新しいものが生み出されないようになっちゃうことがあるのは、歴史的に証明されている。

『だから、みんなちがっていい 』(扶桑社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

だってわれわれが子どもだったころ、みなさんとは世代が少し違うけど、例えばヤフーなんて、知らなかったじゃないですか。グーグル、意味わかんないし。ところがいまやすごいことになっている。GAFA(米国のIT企業大手、の頭文字を取って名づけられた造語)の台頭と同じように、これからも、次の世代、次の世代へと移り変わっていく。

例えば僕たちが学生だったころには、とにかく「銀行に行きなさい」って言われていました。いま銀行はリストラをガンガンやっている。乙武くんの話を聞いて思ったのは、とにかくサッカーをやりたいって意識させることができるかが勝負ですよね。本当にやりたいと心から思っているかどうかだけが勝負です。

高濱 正伸 花まる学習会代表

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たかはま まさのぶ / Masanobu Takahama

1959年熊本県生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学に入学。1990年同大学院修士課程修了後、1993年に小学校低学年向けの学習教室「花まる学習会」を設立。父母向けに行なっている講演会は毎回、キャンセル待ちが出るほどの盛況ぶり。「情熱大陸」(毎日放送/TBS系)、「カンブリア宮殿」「ソロモン流」(テレビ東京)など、数多くのテレビ番組に紹介されて大反響。「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)、「AERA with Kids」(朝日新聞出版)などの雑誌にも多数登場している。『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』(青春出版社)、『わが子を「メシが食える大人」に育てる』(廣済堂出版)など、著書多数。

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乙武 洋匡 作家

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おとたけ ひろただ / Hirotada Ototake

1976年、東京都生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』がベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。杉並区立杉並第四小学校教諭などを経て、2013年に東京都教育委員に就任。著書に『だいじょうぶ3組』『だから、僕は学校へ行く!』『オトことば。』『オトタケ先生の3つの授業』など多数。

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