《プロに聞く!人事労務Q&A》健康問題を理由に試用期間中に採用を取り消すことはできますか?
回答者:石澤経営労務管理事務所 石澤清貴
求職者に対して応募時の面接において、またはその採否の判断に当たって、病歴の申告を求めることは何ら差し支えありません。病気によっては、入社後の就労に重大な影響を及ぼすこともありえますので、事前の確認が必要です。労働安全衛生法でも、「雇入時健康診断」の項目でも既往歴(過去の病歴)を問診することは認めています(労働安全衛生法施行規則第43条)ので、病歴の申告を求めることは必要でしょう。
ただし、ご相談のように、採用時に病歴の申告を求めても、秘匿または虚偽の申告をされたらわかりません。うつ病等の精神疾患等の場合は、就労後の緊張感によって再発することも多く、その場合、既往歴があり、かつ採用時の申告の求めに対して秘匿または虚偽であったことが判明した場合には、解雇などにより労働契約を解消させるに当たっては会社側にとって有利な材料となります。
通常、多くの企業は、採用後3カ月間などの一定期間を試用期間として設けています。この試用期間とは、解約権留保付労働契約といい、正社員となってからの解雇と比べて広い範囲において解雇の自由が認められています(三菱樹脂事件・最高裁判決 1973年12月12日)。
ただし、留保された解約権に基づく解雇であっても「客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当として是認され得る場合にのみ許される」のであって、まったく自由ということではありません。その者の採用の決定時には知ることができなかった事実を、試用期間中の勤務状態等や能力または健康状態等に照らして正社員として引き続き雇用することが適切でないことについて根拠を示す必要があり、それが解雇事由として妥当なものかどうかを客観的に判断されることになります。