「日本の大企業はオワコン」と信じ込む人の盲点 尾原和啓「大躍進のラストチャンスが到来した」

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2度目に働いていた2006年には、けんすう(古川健介氏)さんなんかも入ってきました。けんすうさんはリクルートに入る前、大学在学中に立ち上げた会社をライブドアに売却していたんですけど、そんな「自ら機会を作る」人たちが集まっていました。

みんな「機会は自分で作ったほうがおいしい」ことを知っている人たちで、「あいつがあそこまでやれるんなら、俺も」と互いにブレーキを外しあっていました。リクルートを辞めた後もみんな仲が良くて、有機的につながっています。リクルートは今でも時々、僕を講演会に呼んでくれたりします。

起業とは「問いを立て、それを解決する」こと

――江副浩正というのはどんな人物だったと思いますか。

尾原 和啓(おばら かずひろ)/IT批評家。1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、グーグル、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任(写真提供:尾原和啓)

江副さんは「仕事という人生の大事を、今みたいにコネで決めていていいのか」という問いを立て、『企業への招待』(のちに『リクルートブック』。『リクナビ』の前身)の創刊によって、その問題を解決します。

「これでいいのか?」と問いを立て、他人が思いもしない方法でそれを解決してしまう。それが起業家だとすれば、江副さんはその典型ですね。それは必ずしもお金のためではない。普通の人には見えない課題を見つけ出し、思いも寄らない方向から問題を解く。そこに最大の快楽を覚えるんです。

(財団で疫病対策や貧困問題に取り組む)ビル・ゲイツも今やすっかり「問題解決の人」で、ネットフリックスの番組で「こんなトイレを作ったらマラリアが減った」と、ものすごく嬉しそうに語っています。

今で言えば「ハッカー」がそうですよね。彼らはシステムの歪みを見つけたら、直さずにはいられない子どもたちで、「俺はこんなにでっかい歪みを直せちゃうもんね」というのが彼らの勲章です。日本ではハッカーが悪者みたいに言われてますが……。

――江副さんの時代にも、日本では情報産業が「虚業」と呼ばれ、ベンチャー企業は「いかがわしい」と言われました。

京大の工学部(大学院)でAI(人工知能)をやっていた僕がマッキンゼーに就職するときも、周りから「なぜ虚業に行くんだ」と言われたものです。「情報産業」=「虚業」となってしまったのはとても残念なことですね。

一方で、インターネットの時代になっても日本ではiモードという手軽なプラットフォームが存在したこともあって、そのうえで簡単に立ち上げられるゲームの会社が林立し、「ベンチャー」=「ゲーム」になってしまいました。日本で課題解決型のベンチャーがたくさん登場し始めたのは2010年を過ぎてから。江副さんを起点に考えると、25年ほどの空白があります。

そうした中で、リクルートは江副さんが残した課題解決のDNAを脈々と受け継いできました。

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