TiKToKで若者大ウケ「異色タクシー会社」の正体 苦境を打開するための大胆すぎる経営戦略

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隔勤の月12出勤で、1日6万円前後の売り上げをキープしていた村松さんも、現在の売り上げは右肩下がりが続くという。

それでも「タクシー運転手だからこそ可能な生き方もある」と前を向く。2冊の鉄道を被写体とした写真集を発売するなど、現在も精力的にカメラマンとしての活動を続けており、今年は個展の開催も予定している。

「職業としてカメラマン、記者をしているときは、つねに時間に追われた生活でした。今は自分がやりたい写真を撮る時間が増え、その内容が評価されて個展の開催までこぎつけることができた。正直、最初はタクシー会社で働くことに抵抗がなかった、といえばうそになります。

ただ、今はできるだけ自分らしい生き方を続けながら、この会社で働いていきたいと思っています。タクシードライバーの誰もが命を削りながら働くという厳しい局面ですが、時間の有効活用はできる。この仕事は結局、何をとるかという自分の考え方次第なんです」

ドライバーの平均年齢は業界平均を下回る

全国のドライバーの平均年齢は約60歳といわれている。これに対して三和交通の平均年齢は49歳で、営業所別では平均45歳も記録している。この数字はアイデアが生み出した結果であり、いい意味でタクシー会社らしくない社風が後押しした面も大きいのではないか。

それでも、吉川社長は強い危機感を抱き続けているという。

「2015年の段階で全国に34万人いたタクシー乗務社員さんですが、過去5年間で6万人もいなくなっており、去年には28万人までその数を減らしている。あと5年で団塊の世代の75歳リタイアも出てくるので、この10年間で計10万人くらいは減ると見ています。

もはやこうなってくると、外国人労働者の規制緩和や派遣業の解禁といった外的要素がないと厳しい時代が訪れている。自社単体でできることは、入ってくださる方に長く働いていただける環境づくりと、間口を広げること。三和交通はすごいではなく、三和交通は何か面白い、と思っていただけるような会社づくりを続けていきたいですね」

資金力の少なさをアイデアでカバーし、知名度を上げて若年化を図る、と言うは易し。だが、業界全体に対する世間からのイメージとのギャップを考慮すれば、結果を出すには非常に高いハードルを越える必要がある。

強烈な逆風を採用という未来への肥やしとする三和交通の姿勢は、アフターコロナを生き抜くためのタクシー界にとって、1つの解答であるという気がしている。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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