受験生が必携の「カイロ」使用後の意外な活用術 袋を開けるとなぜ温まるか、メカニズムも解説
ハクキンカイロは80年以上の歴史があり、今でも発売されていることは驚きです。当時から化学的なことがわかっていたのか不思議です。しかし、ハクキンカイロは、炭化水素のベンジン(燃料)を使うこと、熱くなりすぎ、やけどの危険性があり、また容器が金属製であることから、その使い勝手の悪さがあって、現在は使い捨てカイロが広く使われています。
「エコカイロ」は、近年、酢酸ナトリウムを含む酢酸水溶液に、コイン状の金属片を封入したビニールパックとして売られています。内封の金属片で刺激すると結晶化し、約50度前後の発熱を1時間ほど持続します。放熱後は熱湯に入れ吸熱させることで結晶を溶かし、繰り返し使用が可能です。
これは溶液が溶解度以上の濃度である過飽和状態にあっても、しかも凝固点が室内温度以上かつ過冷却時(凝固点以下の温度)にあっても凝固しにくい極めて安定な酢酸ナトリウムの性質を活かしたものです。過冷却時に何らかの刺激(振動など)を加えると結晶化が始まり、その時に発生する凝固熱を利用した製品です。化学物質の性質をうまく利用したカイロと言えます。
丸暗記受験の弊害
上述のように、カイロ1つとっても化学と密接に関係していることがわかります。身の回りには化学製品や化学物質で溢れていますが、化学のことは、さて置き、使えればよしとする考え方がはびこっています。身の回りの生活と化学が乖離しています。
カイロに限らず、身の回りの生活に関する化学を題材とする大学入試問題はほとんど出題されません。出題されるのは、相変わらずの暗記問題、教科書に書いてある断片的な内容に限られていると言っても過言ではありません。せっかく暗記しても入試が終わるとすぐに忘れてしまうのでは大きな問題です。