受験生が必携の「カイロ」使用後の意外な活用術 袋を開けるとなぜ温まるか、メカニズムも解説

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鉄に関していえば、「次の鉄の化合物の酸化数はいくつか」「色は何色か」「イオン化傾向の高い順に並べなさい」等、また、ありきたりの計算問題などと、化学的な意味を理解しなくても暗記すれば点が取れる仕組みの出題が未だに多く見られます。

高等学校の化学教育は受験のための化学、これは言いすぎなのかもしれませんが、断片的な知識を詰め込むことに汲々としているように思います。身の回りの生活との関係でそれぞれ断片的な知識がつながっていることを教えるべきでしょう。そのためには、大学入試問題の出し方を考えなければなりません。

身の回りの生活を題材に

もっと身の回りの生活を題材にして関連性を考えさせる出題が求められます。前述の錆、使い捨てカイロ、脱酸素剤に関連して、共通している化学的事実を記述させる出題は可能でしょう。記述式は採点が難しいと敬遠されがちですが、大学入試改革には必要です。

また、前述の過飽和状態や過冷却状態は溶液や溶解度の項で用語として勉強しますが、身の回りの現象としての関連性がイメージできていないのは化学教育の欠陥と言えるかもしれません。このことは、前述以外の例が数多くありますが割愛します。

大学入試改革が叫ばれて久しいのですが、いっこうに進展がありません。長年、大学で学生の教育に携わってきた者として、小手先の枝葉の議論ではない抜本的な改革が必要だと感じていますが、これに関しては稿を改めたいと思います。

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