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EMS世界一の鴻海・劉CEOがCOMPUTEXに初登壇。同社が目指すスマート化の全貌と黒子役から方針転換した本当の理由

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COMPUTEXの5月20日の基調講演に登場した鴻海精密工業の劉揚偉董事長CEO (写真:Annabelle Chih/Bloomberg)

5月20日に台湾・台北市で開幕した世界最大級のIT見本市「COMPUTEX台北」(コンピュテックス)で、台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)の劉揚偉董事長CEOが基調講演を行った。

鴻海は2024年の売上高が約33兆円で、電子機器受託製造(EMS)業界で世界最大手である。アップルのiPhoneや任天堂のスイッチなどの製造を手掛けていることでも知られ、生成AIサーバーの製造でもトップシェアを誇る。ただ、EMSというエレクトロニクス業界の黒子の立場を徹底してきたこともあり、COMPUTEXの基調講演に劉CEOが出てくるのは、実は今年が初めてだ。

講演では鴻海が製造するハードウェアによって社会のスマート化を進める未来像や新たな経営方針を発表。講演後半では前日に基調講演を終えたエヌビディアのジェンスン・フアンCEOがサプライズ登場して、会場を沸かせた。

ロボットに「脳」、日常業務の8割を処理へ

鴻海は前日の19日にエヌビディアとデータを処理・出力する最先端のデータセンターである「AIファクトリー」を台湾で構築すると発表していた(詳細はこちら)。講演の冒頭で劉CEOは1枚のメモを紹介し、「AIファクトリー」の構築構想を1年半前にフアンCEOと議論していたと明かした。

そして劉CEOは今後の鴻海はスマートファクトリー、スマートEV、スマートシティの3領域のプラットフォーム構築を進めると発表した。もともと鴻海は「EV、デジタル医療、ロボット」の3領域を「AI、半導体、次世代通信」のコア技術と掛け合わせて事業成長を図る「3+3」という経営方針を持っていた。そこに上記の3つのプラットフォーム構築を加えて「3+3+3」に方針を拡張させる。

冒頭で劉CEOが投影した1枚のメモ。「AIファクトリー」の構築構想を1年半前にフアンCEOと議論していたという (記者撮影)

具体的な事例も提示。生成AIを活用し、「脳」を持つ次世代ロボット開発を進めていると説明した。一部の工場ではロボットAI技術を大規模に導入し、不良品の発見や生産設備のメンテナンスなどの日常業務の8割を自動で処理できるようにし、従業員が複雑な2割の業務に集中できるようになっていると語った。裏を返せば、人間の仕事は完全に奪われないともいえる。

また工場のAIは学習と適応を繰り返し、生産プロセスを調整する能力を持つことから、生産にかかる時間を10%以上短縮できたとアピール。このような工場を世界各地に広げるべく、エヌビディアのプラットフォームも活用し、ロボットの「脳」を訓練した後に生産ラインに投入していくと話した。

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