8年前にシャープへの出資を決めた鴻海。創業者でカリスマ経営者のテリー・ゴウ氏が送り込んだ腹心幹部らが、シャープ再建に取り組んだ。しかし2019年以降の経営混乱を受けて、鴻海の現経営陣が募らせた古参の腹心幹部らへの”不信感”とは。
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「私の意思は極めてクリアだ。鴻海はつねにシャープと手を取り合って歩んでいく。(中略)そして輝かしいシャープの未来を、両社でともに目にするのだ」
台湾・鴻海精密工業の劉揚偉董事長兼CEOはこう答えた。劉CEOは6月27日付でシャープ会長に就任。その前日に本誌の書面インタビュー(【独占】「シャープをどうする」鴻海トップに直撃)に応じ、「シャープ再・再建」への決意を表明したのだ。
世界最大のEMS(電子機器受託製造サービス)である鴻海は、アップルやマイクロソフト、グーグルといったアメリカのハイテクガリバーを軒並み大口顧客に抱える。鴻海自身も年商約28兆円、世界従業員数約100万人(繁忙期)という巨体だ。
この「電子の帝国」を統べる劉CEOが昨年7月以来、毎月1週間シャープを訪れ、経営再建問題に関与してきたことはあまり知られていない。今回就任したシャープ会長職は代表権も執行権限もなく、お飾りと言われかねない。それでもシャープの株主と社員に対し、強いコミットメントを示す狙いで就いた。
シャープは誰のもの?
鴻海全体の経営責任を負う劉CEOとして、これはリスクを伴う行為だ。傘下の不振企業にここまで肩入れすれば、展開次第では自身が鴻海株主の批判の矢面に立たされる。それでもシャープ再・再建に毎月4分の1もの時間を投じるのは、劉CEOの経営者としての目論見があるからだ。
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