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塩野義製薬がJT傘下「鳥居薬品」の買収に踏み切った!近年では珍しい国内同業へのM&A 、就任して17年が経つ手代木社長が明かした狙いとは?

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手代木功/てしろぎ・いさお 1959年12月宮城県生まれ。1982年東京大学薬学部卒業、塩野義製薬入社。1987年にアメリカ・ニューヨークオフィス駐在。帰国後、社長室勤務を経て1999年経営企画部長。2004年医薬研究開発本部長、2006年専務執行役員、2008年4月社長。2022年7月代表取締役会長兼社長CEOに就任(撮影:尾形文繁)
2025年5月、塩野義製薬は約1600億円でJTの医薬品事業と傘下の鳥居薬品、アメリカのグループ会社アクロス社を買収すると発表した。2008年にアメリカのサイエル社を1500億円で買収して以降、約16年ぶりとなる大型買収だ。
国内製薬企業は海外企業を買収することで開発品を取得する動きが多く、国内同業の買収は直近にない動きだった。2008年の社長就任から17年ほど同社を牽引してきた手代木社長に、今回の買収の狙いと今後の成長戦略について聞いた。

成長に向けて研究力を強化する

――今回、買収を決断した理由は何でしょうか。

一つは研究力の強化だ。今の売上高は大体4500億円ぐらいだが、2025年度に5300億円、2030年に8000億円にするという目標を公表している。自社開発品を中心に会社を成長させるためには、研究開発能力を上げなければいけない。

しかし、新薬開発のトレンドが低分子薬からバイオ医薬品にシフトしている中で、低分子分野の研究開発者が減ってきている。ほかの製薬会社は低分子から撤退する方向にある。そこをどう補うかが重要な課題だった。

その中でJTは、国内でも低分子化合物分野に強い会社で、優秀な研究者が多くいる。また、鳥居薬品の強い腎領域やアレルギー領域などは、当社が強化したかったQOL疾患(生活の質にかかわる疾患)領域であり、ここを手に入れることもできた。

――なぜ、このタイミングで買収に踏み切ったのですか。

これまで当社の最大の課題は、(売り上げ・利益の半分近くを占める)主力である抗HIV薬のロイヤルティーが、2029年前後の特許切れで減っていくことだった。金額が莫大なため、これを補うことはそう簡単ではない。

しかし抗HIV薬を開発するViiV社(英グラクソ・スミスクライン社とファイザー社が2009年に設立した抗HIV薬に特化した会社で、塩野義は2012年10月に株式10%を取得)は、現在主流の1日1回の飲み薬から、2カ月に一度の投与で済む注射剤を開発した。

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