受験生が必携の「カイロ」使用後の意外な活用術 袋を開けるとなぜ温まるか、メカニズムも解説
大学入学共通テストも実施され、いよいよ受験シーズンが到来しました。未曽有のコロナ禍、しかも厳しい寒さの下での受験ともなれば、マスクをして感染対策のみならず寒さ対策にも気を配らなければなりません。便利な使い捨てカイロは、受験生にとっても必携品です。
しかし、袋を開けるとなぜ温まるのか、知っている人は意外と少ないかもしれません。その化学的なメカニズムについて、徳島大学名誉教授・和田眞さん(専門は有機化学)が解説します。それは、生活の知恵にもつながります。
カイロとは化学発熱体や蓄熱材等を内蔵し携帯して身体を暖めるものと定義されおり、その歴史は古く江戸時代までさかのぼります。カイロの原型は、平安時代末頃から江戸時代にかけて、石を温めて真綿や布などでくるみ、懐に入れて胸や腹などの暖を取るために用いた「温石(おんじゃく)」と言われています。
その後、木炭の粉末に樹木の桐の灰・「桐灰」(保温力を高める)を入れて、金属製容器中で燃焼させる「灰式カイロ」が登場しました。これを生産していた会社が「桐灰化学」です。使い捨てカイロ「桐灰はる」のブランドを確立した会社です。
明治時代は、この灰式カイロでしたが、大正に入り「ハクキンカイロ」が登場します。筆者は小学生の頃に、このハクキンカイロを使った経験があります。その後、使い捨てカイロが登場し、ハクキンカイロは、ほぼ、その役割を終えることになりました。そこで、まず現在、最もよく使われている使い捨てカイロの化学から話を進めましょう。
使い捨てカイロはなぜ温かくなるのか
使い捨てカイロ開発の歴史もいろいろとありますが、現在の使い捨てカイロが普及したのは1978年、ロッテ電子工業(現・ロッテ健康産業)が発売した「ホカロン」以降です。
ダンダン(エステー)、ホッカイロ(興和)、桐灰カイロはる(小林製薬、2020年7月に桐灰化学を吸収合併)、オンパックス(エステー、2018年にマイコールから事業譲渡)など多くの商品が発売されています。1988年、マイコールが貼るタイプのカイロを業界に先駆けて発売し成功を収めました。現在ではミニサイズ、靴下用、肩用、座布団サイズなど様々なバリエーションのものが発売されていて、冬場の人気商品となっています。