40年以上、働く時代――。
今まで20年近く働いた「40歳前後」の世代は、ちょうどキャリアの折り返し地点にいる世代だ。
いま現在は、まだ少しは残った若さと、これまで培った経験が買われて、いわゆる「働き盛り」。だが、キャリア人生がひとつの山だとするなら、後は下り坂かと考えると、一抹の不安を覚える年齢でもある。
体力も気力も発案力にも陰りが見えるこの世代。定年60歳時代ならいざしらず、70歳まで働くのが当たり前ともなれば、下り坂をどう逃げ切るかという戦略も通用しない。われわれは、今後、どのように働き、自分の居場所を確保すべきなのか?
本連載では、40歳前後でキャリアのターニングポイントを迎えた先達たちに、どうやって危機を乗り越えたのか? どのようなキャリア戦略を立て、実行したのかを聞くことで、「40歳クライシス(40歳前後のキャリアの危機)=若さで勝負することも、貫録で勝負することも難しい年齢」の乗り越え方を追求していきたい。
第2回目は、大手出版社の編集者から独立、離婚、取引先からのリストラなどの数々のクライシスを乗り越え、当代随一の人気スタイリストに飛躍した大草直子さんにご登場いただく。
38歳で出産、39歳でクビ、40歳で大抜擢!
大草直子さん――。
おそらく、本稿をお読みの多くの女性読者の方なら、あえて「肩書」を言わずともご存じの存在なのではないか。
私服を公開するブログは月間、180万pvを超える、人気スタイリスト。雑誌編集者としても一流で、現在は40歳前後の女性向けファッション誌『DRESS』のファッションディレクターとして、誌面作りの責任を負う。そのうえ、ライターとしての手腕も惜しみなく発揮し、出す本出す本はベストセラーに。最近では、自ら立ち上げたブランド「HRM」のデザイナーとして、各企業と組んだコラボ商品も発表する。もはや、スタイリスト、編集者といった「肩書」ではなく、「大草直子」という名前で耳目が集まり、お客さんがつく存在だ。
だが、そんな大草さんも、ここに至るまでの道のりは平坦ではない。特に、「40歳前後」は、変化が目覚ましい。
37歳のときに最初の本を出し、38歳で第3子を産み、39歳のときに長年スタイリストとして携わった雑誌から「クビになった」。40歳のときに、新雑誌のファッション・ディレクターに抜擢されたが、家庭との両立が困難になり、「夫に専業主夫になってもらう」という決断も下している。
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