日系も次々参入「途上国の農業支援」に見た課題 一方で社会課題に挑む企業への関心は高まる

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NFCカードを持つDegasの農家(写真:Degas提供)

日本発のスタートアップ企業が発展途上国で農業支援ビジネスに取り組んでいる。通信インフラや金融へのアクセスが難しい小規模農家が農業に必要な情報や物品、資金を入手して効率的な生産ができるよう仕組み作りに奔走する。

途上国では人口の多くが農業に従事しており、生産性の低さが貧困の大きな要因とされる。スタートアップの独創的な技術やアイデアが貧国問題解決の助けとなれるのか――。

企業向けスマートフォンを開発・販売するアメグミ(東京都千代田区)は2020年から、アフリカのルワンダとインドで農業支援を始めた。現地の農業団体を通じてルワンダで140台、インドで20台弱のスマホを小規模農家に配布。農家はスマホを利用して農業団体から提供されるさまざまな情報にタイムリーにアクセスできる。

「ここの市場で種が安く買えますよ」「もうすぐモンスーンが来るので対策をしてください」――。例えば、こんな情報が農業団体から配信される。従来は小規模な農家が高価なスマホを持つのは難しく、農業団体が情報提供する場合、直接農家を訪問したり、ガラケー(従来型携帯電話)に電話したりする必要があったという。

農業団体や企業向けスマホを最安値で販売

アメグミが農業団体や企業に販売するスマホは1台40ドルと新品スマホの中では最安値帯に属する。安さの秘密は基本ソフト(OS)を自社で開発し、業務に不要な機能を省いていることにある。ゲームや娯楽関連のサービスを利用できなくするなど一般的なスマホと比べて機能を制限している。スマホを配布された農家が「仕事そっちのけでゲームに興じてしまう」といった事態を防げるのだ。

また「端末は原価で販売して、独自のアプリでもうける」(常盤瑛祐代表)いうビジネスモデルを採用。アプリストアを独自に運営しており、農業の電子商取引(EC)、ネットバンキングなどのアプリを利用できる。農業団体や企業は端末を配るだけでなく、アプリの使用方法を農家に伝えて、業務効率化を推進できる。

例えば、対話アプリ「ワッツアップ」を用いて、農家は農地の写真を農業団体に送信。農業団体は写真を通じて作物の生育状況に基づいた効率的な育て方を助言するといった使い方が可能だ。

インドでは2020年4月に現地法人を設立し、10月から本格的に営業活動を始めた。「現地の農家はほぼ誰もスマホを持っておらず、教育を受ける手段も連絡を取る手段もなかった」(同社)。農業団体と農家とでワッツアップのグループを作成することで、直接訪問して状況を見聞きしたり、1人ひとりに情報を伝えたりする必要がなくなり、効率的な情報共有ができるようになったという。

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