日系も次々参入「途上国の農業支援」に見た課題 一方で社会課題に挑む企業への関心は高まる

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品質の高い種子や肥料を適切に使うことで「生産性は2倍に増やせる」(同)とみているが、貧しい農家は信用力がないため、種子や肥料を購入するためのお金を銀行から借りることが難しい。

そこでデガスは必要な種子や肥料などを農家に先行して提供する代わりに、できた農作物の収穫量の20%を返済に充ててもらう仕組みを考えた。

さらに買い手となる大手企業もデガスが確保。農家が希望すれば、残りの収穫物も同社が買い取り、数%程度の利益を上乗せして大手企業に販売する仕組みだ。中間事業者を省くことで、大手企業も割安な価格で農作物を調達できる利点がある。これまでに同ネットワークを通じて約2000トンの農作物を調達、大手バイヤー9社に平均50トンを販売した。

外国人からの援助に慣れている人たちも

「こんな種子を使って本当に生産性が上がるのか?」。創業直後は現地の農家になかなか信用してもらえなかった。外国人から援助を受けることに慣れており、約束通りに収穫物を返済してもらえない例も多々あった。

そこで牧浦CEOは現地の人材を採用して農家を訪問してもらうやり方に切り替えた。現在約40人いる社員のうち、日本人は2人だけ。最高執行責任者(COO)はアフリカで農業関連企業の経営経験を持つインド人が担う。一連の改革で農家の契約順守率は9割弱にまで上がったという。

このほどベンチャーキャピタルなどから2億4000万円を調達、今後は農家向けのファイナンス事業への参入も視野に入れる。通信機能を搭載した「NFCカード」を農家に配布し、収穫高や買取実績などのデータを収集。農家ごとの信用力を算出して金融機関の融資などにつなげる構想を描く。

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