日系も次々参入「途上国の農業支援」に見た課題 一方で社会課題に挑む企業への関心は高まる

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さらに通信機能を搭載した土壌センサーを10人の農家に配布。農地から直接情報収集する実験も始めた。インドの通信環境は悪く、定期的に情報を集めるまでには課題があるが、「今後は収量などのデータを自動で収集して、農家が活用できるようにしたい」(常盤代表)。

一方で、インド・セルラー・アンド・エレクトロニクス協会(ICEA)の統計を元に算出したデータによると、同国のスマホ普及率は2019年末時点で40~45%にとどまる。また人口の5割、6億人以上が農業に従事しているが、農業の生産性は日本の半分程度という。

アメグミでは「多くの小規模農家が伝統的な農法や周囲の意見により農法を決定しており、科学的で効率的な農法という情報へアクセスするすべを持たないことが農業収入が増えない要因」とみる。さらに「農産物が消費者の手に渡るまで7~10人の中間事業者を介することで農家は最終小売価格の3割程度の収入しかえられない」という。

将来的にネットによる農産物の直販を始めるにも情報の基盤となるスマホを持つことが欠かせない。同社は2021年3月までにまず300台の提供を目指す。

ヘルスケアアプリから農業事業に転身

アフリカの小規模な農家を束ねて、必要な資材やノウハウを包括的に提供するスタートアップもある。西アフリカのガーナで事業を展開するDegas(デガス、東京都渋谷区)だ。

同社が展開する「デガス ファーマー ネットワーク」は 高品質の種子・肥料の提供、農業知識の指導、収穫物の回収・販売まで、農業にかかわる全プロセスをパッケージにして提供する。2019年3月の開始から2年弱で同ネットワークに参加する農家数は3000を突破。各農家の生産性は「平均2倍以上になった」という。

牧浦さんと現地の農家たち(写真:牧浦さん提供)

同社を率いる牧浦土雅最高経営責任者(CEO)はデガスを起業するまで、東アフリカのルワンダなどでヘルスケアのアプリやオンライン教育などの事業を手がけていた。

農業に関心を持つきっかけは2018年、首都ギガリを訪れたときのこと。都市部は目覚ましい経済成長を遂げていたが、周辺の農村は貧しいままであることに衝撃を受けた。

背景には世界的な所得格差の拡大がある。世界の貧困層人口(1日1.9ドル以下で生活している人)は1990年の19億人から2020年に6億人へと減っている一方で、サハラ砂漠以南のアフリカでは人口増加に伴い貧困層が増えているという。

同地域における貧困層の約70%は小規模農家として生計を立てているが、「1ヘクタールあたりの年間穀物収穫量は世界平均の3分の1にすぎない」(牧浦CEO)ことが貧困からの脱却を難しくしている。

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