”波瀾万丈のキャリア”から僕が学んだこと 【キャリア相談 特別対談】 塩野誠氏×木村敏晴氏(下)

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農家の海外進出

塩野:なるほど。先ほどインドネシアの話が出ましたが、インドネシアにコメを作りに行くって、どういう経緯で、今どんな感じになっているのですか。

木村:たまたま友人の結婚式がバリであったので、せっかく行くならインドネシアの農業を見てこようと思って、いくつかアポを入れて回ったのです。ワタミ時代にもカンボジアで農場を開いていましたが、当時のカンボジアはいろいろと難しかった。ところがインドネシアに行ったら、なんだかすぐできそうな感触でした。いいものを作りたいという農家の方がすごく多い。この人たちと一緒に仕事したいという単純な理由です。そうしたら日本側の農家も海外に出たいと思っていて、オーストラリアやロシアを視察に行ったりしている。

塩野:海外に出たい農家もけっこう多いのですね。

木村:日本の強い米農家は、作れば作るほど減反政策で作るなと言われる。では、コメが足りない国でどんどん作って感謝されたいというのは、自然なことだと思います。でも、アメリカやブラジルなど広くて恵まれた所でできるかというと、やり方が違いすぎてイメージが湧かない。でもインドネシアはまず田んぼが日本と似ているので、技術が生かせる局面が多い。さらに言うと、季節変動が少なく1年を通して米作りができるから、毎日田植えができて毎日収穫できる。10倍、時間効率、機械効率がいい。もうみんなワクワクしていますね。

塩野:ということは、木村さんがインドネシアに進出する農家を統括している感じですか。

木村:基本的には日本のプロの農家に寄り添って一緒にやるというスタンスです。プロ農家にはいいモノをたくさん作る技術確立に集中してもらえるよう、私はそれ以外を全部やるみたいな。農家同士というベースがあるので、スムーズに行きやすいと思っています。近々、向こうで法人をつくって資金調達もすることになると思います。

――インドネシアでの農業は、面白いだけじゃなく、ビジネスとしての魅力があるのですか。

木村:まず市場に成長力があるし、収益性が全然違います。人件費はもちろんですが、先ほど述べたとおり機械の稼働率も10倍。ブランドもこれから。サプライチェーンもこれから。面白いですね。

塩野:日本人がインドネシアで農業をやるときの強みって何ですか。

木村:いくつかありますが、おいしい農産物って、けっこうたくさんの工程でまじめにやらないとできないんですよね。日本人はそれをちゃんとやりきるまじめさと、農業という文化をすでに持っている。パッケージのセンスも含め、おいしいものとはどういうものか、価値がある状態とはどういうことなのかがわかっている。

塩野:なるほど。今後、インドネシアプロジェクトは、仲間を募っていく感じですか。

木村:そうですね。今はアジアでも作りたいという日本国内の農家をどんどん募集しています。作るのは農産物に限らず、手触り感があるものだったら器でも塗り物でもいい。タイ、マレーシアにもシェアハウス的なものを作ろうとしています。

塩野:どういう人に来てほしいですか。

木村:まずベースに「作っていれば幸せ」というのがある人ですね。そうは言ってもビジネスとして成功していくのも面白いから、そこを目指す人。自分の作っているもののよさをお客さんに感じてもらって、生産者と消費者の距離がすごく近い形で届けたいという価値観に共鳴できる人に来てほしいですね。

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