目上とケンカする経験が必要
塩野:ここまでのキャリア、波乱万丈でしたね。
木村:そうですね。この2年くらいはJRと飛行機会社のために仕事しているんじゃないかというくらい、交通費ばかりかけながらあちこち動き回りました。でも動くことは面白いですね。いちばんいい投資だと思います。
塩野:木村さんのキャリアは、たぶん今の就活学生からすると、理解できないかもしれないけれど(笑)。こぞって「大企業の正社員になりたいです」という学生を見て、どう思いますか。
木村:そうですね。もう皆さん大人で、これから子供をつくったりしていくでしょうから、マーケットに依存しない生き方を真剣に考えてもいいんじゃないかと思います。手触り感がある仕事や、日本の寿司職人みたいに自分の腕だけで食べていける仕事は、何が起きても強いと思う。ある程度の腕があるということは、人生に安心を与えると思います。
塩野:キャリアの選択として、農業が普通に候補になるといいですね。
木村:まあ20代のうちは、自分の能力が換金できるところで、できるかぎり稼いでおいたほうがいいと思いますけどね。
塩野:20代で高く換金するのは難しそうですが、どこもいい人材を求めていますよ。ある上場したIT系企業の経営者なんか、もう会えば二言めには「いい人いないですか」ですから。そして全然いないんですよ、いい人が。
木村:言われなくても自分で動けて、自分で仕事をつくれるみたいなところが足りないのでしょうね。
――そういう能力は大企業にいても、なかなかつきにくいですか?
塩野:一度でも全体を見たことがあるかないかでしょうね。
木村:あとは、目上とケンカして勝った経験がないと、なかなか難しい。もちろんその前には何度も負けることになるのですが。その経験が、今あまりない感じがします。
塩野:まず最初から戦いませんからね。
木村:でも自分で主体的に何かをやるなら、そこを避けて通れない。自分はこうしたいんだということがあれば、上とは絶対ぶつかります。
――木村さんは大きいビジネスをつくっていくよりも、もっとほかに目指すところがあったのですか。
木村:そうですね、ビジネスを大きく、というのは最終目標ではないですね。自分の事業は発信の手段で、「こういうほうがみんな豊かで幸せなんじゃないの」ということを発信して、社会をより素直でエネルギッシュな方向に少しでも持って行けたら、っていう気持ちがいちばん強いかもしれません。おこがましい話ですが。
――面白いですよね。今の若者があこがれる生き方だと思いますよ。
木村:セロリの脇芽を抜く徒労とかも含めて、やりたい人が増えるのであればうれしいかぎりですね。
(構成:長山清子、撮影:大澤誠)
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