政治は高齢者に痛みを求める努力を放棄しているといわれていますが、65歳以上の人をこれまでどおり「高齢者」と気遣い続ければ、いよいよ社会は立ち行かなくなります。「そんなことはない!」といっているのがポピュリズムの政治家たちです。財政では収入と支出がはっきりしているわけですから、そのことを丁寧に説明すれば、国民の大半が納得できるのではないでしょうか。それを一部の経済評論家や政治家が「経済が4%の成長を続ければ、日本の財政は消費増税がなくても再建できる」などというものだから、話がおかしくなるのです。
しかし、4%の成長が本当に可能なのかどうかは、好景気に沸いた小泉政権のときですら2%の成長を掲げながら、実質成長率の平均は1.36%しか達成できなかったのです。当時よりも日本の潜在成長率が落ちていることを考えると、4%という数字は非常に困難なことがわかります。そういう経済評論家は、自分のビジネスを増やすために、国民受けがいい大風呂敷を広げているといわざるをえません。
さらに悪いことに、こうした論法に乗っかってしまう愚かな政治家がじつに多いのです。冷静に財政状況を考えれば、国債の急落リスク、それによる長期金利急騰のリスクを回避するためには、国は増税せざるをえないという結論が出てくるはずです。もちろん、社会保障制度を破綻させないためには、増税と同時に歳出削減が実行されなければなりません。
ところが、歴代政権は社会保障に関する歳出削減の先送りばかりしてきました。それでも、次の政権か、その次の政権は、歳出削減からもう逃げられないと思います。
予算の収支を示す指標として、日本はプライマリーバランス(基礎的財政収支)を用いています。プライマリーバランスとは、税収と日銀からの納付金などの税外収入を合わせた財源から、社会保障などの政策経費を差し引いたものです。2013年度のプライマリーバランスは23.2兆円の赤字です。
世界を見ると、ドイツではすでに黒字を実現しており、イギリスとフランスは2017年に赤字をGDP比で1~2%程度に抑える目標を掲げています。しかも、これら欧州諸国の数値は日本と違って歳出面で政策経費に国債の利払い費まで加えたものです。日本の数字が国際基準から見て、いかに過少に見積もられているかがわかりますが、それでもプライマリーバランスの黒字化を達成できないわけです。
政府は2020年までにプライマリーバランスの黒字化を掲げていますが、その前提として実質2%、名目3%の成長を条件としています。この経済成長率も甘い見通しであるといわざるをえません。
このまま危機を危機として意識しない状況があと10年も続けば、日本は「ゆでガエル」状態になってしまうのではないでしょうか。
次回は、これからの日本が具体的にどうすればいいのかを指し示したいと思います。
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