1ドル120円超なら、日本経済はもたない 「円安国益論」の幻想

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筆者は、日銀の史上空前の量的緩和に疑問を呈する(撮影:尾形 文繁)

リーマンショック後の先進国では、経済状況があまり芳しくないなかで、各国の中央銀行は金融緩和によって自国通貨を割安に誘導し、輸出を拡大しようとしてきました。この点を考慮すると、日本銀行だけが金融緩和を渋るようなことがあれば、日本の企業は過度な円高に苦しまなければならなくなってしまいます。それを避けるためにも、日銀が各国の中央銀行との金融緩和競争にある程度付き合わざるをえないのは、仕方がないでしょう。

国民に大事なのは、実質賃金が上がるかどうか

しかし、だからといって日銀が史上空前の大規模な量的緩和を行うことが、はたして正しいことだったといえるのでしょうか。少なくとも2013年のタイミングでは大規模な量的緩和をやってはいけなかったと私は考えています。量的緩和をやりすぎてしまうと、たとえ物価を上昇させることができたとしても、国民の所得はまったく上がらず、むしろ国民の生活はいままで以上に苦しくなってしまうからです。これは、歴史が証明しています。

国民にとって大事なのは、名目賃金が上がったかどうかではありません。物価変動の影響を加味した、実質賃金が上がるかどうかなのです。現実はどうでしょうか。厚生労働省の毎月勤労統計によると、名目の賃金指数を消費者物価指数で割って算出する実質賃金指数は、2013年11月分(速報値)で5カ月連続低下しています。名目賃金も低下傾向から抜け出せていないのに、これでは国民の生活は辛くなるばかりです。

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