はたしてアメリカは、ほんとうにインフレで幸せになったのでしょうか。
アメリカは国民が金融資産の半分以上を株式でもっている国ですから、単純に考えれば、「株価が上がることは、国民の金融資産が増えること」を意味しています。しかし実際には、一握りの富裕層が金融資産の平均保有額を押し上げているだけで、国民の大半は金融資産をあまりもっていないという状況にあります。
株価を上げることで、景気回復を図るのは邪道
株価が上がり続ける一方で、国民の所得はなかなか増えず、しかも物価が上がり続けているということは、名目以上に実質的な所得は減る傾向にあり、国民生活が苦しくなりつつあることにほかなりません。
FRBのバーナンキ議長は「原因」と「結果」を取り違えました。景気回復の結果として株価が上がるのが経済の正しい道筋であり、株価を上げることで景気回復を図るのは邪道というほかありません。邪道な政策ではどこかに無理が生じるものです。その副作用として、格差の拡大がより深刻になったのです。
「本当の景気回復」とは、株価や企業収益ばかりが高くなり、格差拡大を進めることでは決してありません。国民の生活が向上し、国民が景気のよさを実感できることではないでしょうか。アメリカのインフレ推進派の経済学者は、現実を直視して、もう一回考え直す必要があります。
もちろん、日本のリフレ派の経済学者も考え直すべきです。アメリカと同様に、通貨安や株高を先行させたとしても、「ほんとうの景気回復」など達成されるわけがないからです。むしろその副作用として、アメリカのように家計が疲弊してしまう可能性が高いことはいうまでもありません。
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