だから私は、いまの日本にとっては1ドル=120円が限界なのではないかと考えていますし、日銀はあまりにも無謀な量的緩和をやってはいけないと確信しています。極端な金融政策の修正や円相場の変動は、輸入インフレによる景気悪化を招くばかりでなく、財政危機や銀行危機へと拡大する恐れがあり、マイナス面のほうがはるかに大きいのです。
円安は、国益ではない
インフレになるということは、長期金利が上がるということです。仮にインフレ率2%を達成するならば、長期金利も2%を超えてくるでしょう。2013年度の国の一般会計予算では、総額92.6兆円程度のうち約10兆円が国債の利払いにあてられました。長期金利が2%を超えても、国家財政をこれまでと同じように回していくことができるのでしょうか。否、消費税増税分はすべて利払い増に食われ、財政は厳しい状況に追い込まれるでしょう。
いまだに「円安国益論」を唱える経済学者には、首をかしげざるをえません。経済学者の多くは円安がもたらす「Jカーブ効果」という理論を支持しています。「Jカーブ効果」とは、円安により輸入価格が上昇し、一時的に貿易赤字が拡大するとしても、円安による輸出価格低下で輸出数量が徐々に増加し、最終的に貿易収支も改善するという理論のことをいいます。この理論は、経営や企業活動の現場を無視しています。
日本企業の経営者は多くの場合、円相場が大きく変動しても価格を引き下げたりなどしません。円高が進んだときも価格を引き上げずに耐えたのですから、円安のときだけ価格を引き下げるというのは考えにくい話でしょう。だから、「Jカーブ効果」で想定される円安による輸出価格の低下という理論自体が、少なくとも日本企業には当てはまらなくなってしまっているのです。
前回の記事でも述べてきたように、経済学者も、政治家も、マスコミも、これでもさらなる円安を望むというのでしょうか。私の新刊『インフレどころか世界はこれからデフレで蘇る』(PHP研究所)では、アベノミクスを支える学者たちが反論や反証できないくらい、インフレ推進策が如何に日本経済にとって有害であるかを立証しています。興味のある方は、ぜひご覧いただければ幸いです。
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