1ドル120円超なら、日本経済はもたない 「円安国益論」の幻想

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円相場に目をやると、2014年の1月上旬は103円~105円で推移していますが、これは2012年の円相場の平均値79円より、30%超も円安が進んでいる状況です。当然、大幅な円安は輸入インフレをもたらしています。

結局は消費が落ち込み、企業収益も悪化へ

2013年11月の消費者物価指数は前年同月比で1.2%上昇し、6カ月連続のプラスとなりました。6月は0.4%、7月は0.7%、8月0.8%、9月0.7%、10月0.9%、11月1.2%と、プラス幅が徐々に拡大してきていますが、これは輸入物価のあまりの上昇に耐えられなくなった企業による価格転嫁が、少しずつ進んでいる証左です。

日銀の物価指数年報によると、2013年4月の輸入物価指数(2010年平均=100)は123.8となり、2012年平均の107.3と比べて16.5%も上昇しています。特にに上昇しているのが、石油・石炭・天然ガスの155.8と食料品・飼料の129.5で、これらの指数は2012年平均と比べるとそれぞれ23.0%、17.7%の上昇となっています。

心配なのは、エネルギー価格と食料品価格の上昇が著しく、アメリカ型のインフレになる兆候が出てきていることです。物価指数年報が示す2013年4月は円相場の平均値が97円前後であるのに対して、2014年の1月上旬は104円前後で動いているので、実際の輸入物価指数はもっと上がっているでしょう。

これまでの動向を踏まえて、日銀が目標に掲げる2.0%のインフレを達成するためには、円安がどのくらいまで進めばよいのかを計算すると、120円が1年間も定着するようなことがあれば、達成できる可能性が高まると私はみています。

 企業のなかには、忍耐強く価格転嫁を控えているか、できるだけ価格転嫁を抑えてきているところが多いのですが、こうした企業は消費者にとってありがたい存在です。しかしさすがに120円まで円安が進むようなことがあれば、企業の多くが輸入インフレに降参し、ある程度の価格転嫁を行なわざるをえないのではないでしょうか。

所得が上がらないなかでの2%のインフレは、国民の過剰な買い控えを引き起こし、消費を大幅に落ち込ませることになります。その結果、企業の業績は悪化し、所得が引き下げられる悪循環に嵌り込むでしょう。

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