安倍内閣は、成長戦略の一環として、法人実効税率の引き下げを検討している。東洋経済オンラインでも、「実現へ高いハードル、法人税引き下げの帰趨」などで詳報されているところだ。現在、政府税制調査会で、法人課税ディスカッショングループを設けて議論を進めている。
法人税をめぐる「追い風」と「向かい風」
筆者は、経済学の立場から首尾一貫して、グローバル化を踏まえてわが国の税制を法人課税(源泉地主義課税)から消費課税(仕向地主義課税)へシフトさせる観点から、法人実効税率引き下げの必要性を主張してきた。
とはいえ、最終的にどうまとまるかは全く予断を許さない。だが、わが国の税制改正の決定過程のしきたりから見ると、今までにない機運が感じられる。
1つに、税金の課税対象(課税ベース)をどうするかという議論は、毎年のように各界から要望が出され、そのうちどれを採択するかを決めているのだが、税率変更を議論するという何年かに一度しか訪れない機会が今訪れていること。そして、支持率が高い安倍内閣で、安倍首相自ら税率引き下げに意欲を示している以上、これを正面から阻止することに加担しにくいこと。これらは、法人税率引き下げに追い風となっている。
しかし、向かい風もある。一部の国民には、消費税率を引き上げるさなかに、法人税率を引き下げるとは、「消費者冷遇、企業優遇」ではないかとの忌避感があること。安倍内閣として、2020年度までに基礎的財政収支の黒字化という財政健全化目標にコミットしており、代替財源なく大幅減税をして財政赤字をこれ以上拡大できないこと。法人関係の税収の約6割は地方自治体の収入になる(残りが国の収入)が、法人減税をして収入全体が減ることを地方自治体側は容認しないことだ。
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