本当に「法人税減税」はできるのか 改革の論点が、いよいよ出そろった

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法人事業税での付加価値割の適用拡大(現在:付加価値割が標準税率での税収の約2割を占める)

(解説)→地方税である法人事業税には、大企業に対して、法人所得に比例した所得割、法人の付加価値に比例した付加価値割、資本金等に比例した資本割がある。そのうち、法人実効税率と関係するのは所得割で、この税率を下げれば法人実効税率は下がる。

2004年度から、所得割の税率を9.6%から現行の7.2%に下げる代わりに、付加価値割を税率0.48%で新設した前例がある。ただし、付加価値割は、赤字法人(所得割の税負担がゼロ)の企業にも税負担を求めることになる。

地方税の制度設計に関わる総務省は積極推進。現在大企業だけに適用される付加価値割を、中小企業にも適用する提案があるが、中小企業は猛反対。大企業の中で、所得割で課されるより付加価値割で課されると税負担が減る企業は、内々には賛成している。

ちなみに、筆者は現行のままでの付加価値割の適用拡大には、経済学の立場から反対している。

以上、課税ベースの見直し候補についてみてきたが、法人税の課税ベースを拡大する規模が大きいほど、法人実効税率を大きく下げられるとともに、他の税目に代替財源を求める度合いが減るので、実現可能性が高くなる。経済界がこれらの利害対立を乗り越えて意見を収束させられるかが、今後のカギとなろう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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