「ゆでガエル」状態になりつつある日本  人口動態はウソをつかない

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その一方で、高齢化の問題は深刻で、高齢者の人口は年々増えています。
 日本の年齢別人口について、国立社会保障・人口問題研究所が次のように試算しています。2014年は総人口1億2695万人に対して65歳以上は3308万人(人口比26%)ですが、2025年になると、総人口1億2066万人に対して65歳以上は3657万人(30%)になります。

また、2035年には総人口1億1212万人に対して65歳以上は3741万人(33%)、2050年には総人口9708万人に対して65歳以上は3768万人(39%)と予測しているのです。2086年には、65歳以上の人口比率は41.3%とピークを打ち、高齢化の上昇はこのあたりで止まる予測です。

1人の働き手で、1人を支えることができるのか

さらに、働き手となる年齢の人口も減少しています。これまで1人の働き手が支える平均扶養人数は、1960年代後半から2000年頃までは0.4人でしたが、2010年には0.6人になり、2060年には約1人へと増加していく見込みです。
 ここまで少子高齢化と社会保障の問題を先送りし続けてきたツケを、日本国民は支払わなければならなくなります。甘い試算に基づく年金制度や社会保障制度がいつまでも成り立つわけがないからです。

とくに、社会保障の中核である年金制度は、かなり甘い試算に基づいて設計されています。年金の予定利回りがそうです。年金の予定運用利回りと現実の収益との乖離は、先進国共通の課題といってよく、日本でも国民年金・厚生年金の積立金の「運用利回りを4.1%」としています。しかし、過去10年を見ても、そんな利回りは出ていないのです。また「物価上昇率1.0%」「賃金上昇率2.5%」という前提条件も、とても現実的な数値とは言えません。

社会保障や財政に関しては、時の政権や厚労省のトップが責任をかぶりたくないために、甘い見通し、甘い試算に終始しています。ですから状況は、マスコミでいわれているよりも相当に悪いのです。先ほど、将来人口の予測は精度が高いと述べましたが、私は国の試算よりも少子高齢化が若干進むのではないかとみています。その理由は、医療の進歩によって、平均寿命がさらに延びる可能性が高いからです。

現在の高齢化に関する試算では、医療の進歩を考慮に入れていません。2025年には、すでに医療技術の発展で、日本人の死因のトップを占めてきた「がん」が死の病ではなくなっているかもしれません。平均寿命はさらに5歳くらい延び、なおかつ高度な医療であるために高額の医療費が財政を圧迫するようになるでしょう。しかも、いまの60代、70代は昔に比べて肉体的にずっと若く、将来ますます健康的に暮らす人が増えていきます。これからの日本では、そうした点を考慮しない国の試算は当てにならない部分があるのです。

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