戦国時代に武将が食べていた「まずい飯」の正体 歴史小説家が資料をもとに当時の食事を再現
侵略を受けた黄慎は当然、日本に対して相当に憤っており、その記述については割り引いて考えなくてはいけないが、赤米がそうおいしいものではなかったということは、他の日本国内の記録とも一致するので、まず真実と考えてよいだろう。しかし、「飲み込めないほどまずい」というのは食物に対する最大級の罵倒で興味深い。
赤米≒大唐米?
ぜひ食べてみたいと、調査するうちに、赤米はインディカ系と目される大唐米と呼ばれることが多かったということがわかってきた。
そして、富山県農林水産総合技術センターの育種課長、小島洋一郎氏の助言もいただき、現在、唐法師、唐干と呼ばれる品種が、この大唐米に近い可能性があるということを突き止めた。
あとは、栽培している人がいないか探すだけだが、四方八方、調べた結果、長崎県で自給自足の生活を目指しているケップルス氏(ブログ上のハンドルネーム)のブログ、『おうちで穀物自給』に行き着く。
2017年の記事だったが、ジーンバンクから種子を取り寄せ、田植えしたと書かれてあった。現在も栽培しているかもしれないと思い、「唐法師、唐干が手元にあれば分けていただけないだろうか」と頼んでみる。
すると、「唐干と唐法師は株が倒伏して収穫をあきらめたが、代りにメラゴメという近い品種が2系統取れた。片方の玄米が0.9合、もう片方の5分づき米が1.9合ほどあるので、これらならお譲りできる」というお返事をいただいた。
メラゴメも専門家が、赤米の末裔候補としてあげている品種である。「ぜひ、分けてください」。そうお願いしたところ、ケップルス氏は快く引き受けてくれた。
写真は、紅染め餅という最近開発された赤米の品種(右)と、メラゴメ(左)を並べたものである。ご覧の通り、メラゴメの方が細長い。
これはインディカ系の品種の特徴で、先の黄慎の日記の記述と一致する。ケップルス氏によると、唐干、唐法師、メラゴメは水田でなく、畑でも育てることができるという。
ただ、全般的に化学肥料に弱く、尿素を加えたことが、唐干と唐法師の倒伏に関係しているかもしれないとのことだった。
大唐米は、痩せた土地でも育つ品種だったようだが、現代の化学肥料にはかえって弱いのかもしれない。
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