戦国時代に武将が食べていた「まずい飯」の正体

歴史小説家が資料をもとに当時の食事を再現

今度は、水分がないのがまずく感じる原因かもしれないと考え、湯漬けにしてみた。しかし、これが失敗だった。まったく水を吸わないうえ、味が薄いのがさらに強調される。本当に飲み下せたもんじゃない。

おかずに用意した梅干しやぬか漬けともあわない。酸っぱくてしょっぱい梅干しやぬか漬けは、コシヒカリ等のジャポニカ系なら甘さを引き立て食欲をそそる。しかし、淡白なインディカ米だと、邪魔なだけである。

箸をすすめるのに難渋しつつ、ようようのことで茶碗を空けた。ただ面白いのは、こんなに苦労したのに、おなかが膨れた感じは一切しないことである。『本朝食鑑』に「米の性が薄く腹がへり易いのは残念である」と書かれているとおりだ。消化のよい品種なのである。江戸時代は、この特徴のため、病人に出されることも多かったらしい。

はだしのゲン式の精米にチャレンジ

精米したものも試したいので、もう1つの系統は、行きつけのお米屋さんに持っていくことにした。ところが、赤米を見せたところ、色が交ざってしまうからということで断られてしまった。

私は、赤米、大唐米の歴史が迫害の歴史でもあることを思い出した。年貢を赤米で納める割合を一定以内に抑えるよう命じる大名がいたし、農民も苗代で白米に赤米が混ざることを嫌がりまったく別の場所で育てたという。

お米屋さんに無理強いをすることもできないので、人力精米をやってみることにした。『はだしのゲン』に載っていた、一升瓶に玄米を入れ、菜箸でつくというやり方だ。今は令和なので少し進歩して、使うのは一升瓶ではなくペットボトルである。

しかし、これがまた大変だった。とにかく単調でつまらない作業なのである。どれくらい時間がかかるものなんだろうかと調べたら、最低でも5時間はつく必要があるようで、なかには1日3時間、1週間もつき続けた人もいた。

(写真:筆者撮影)

気が遠くなりそうになったが、それでも心を無にして1時間ほどついたところで、右肩に激痛が走った。「もうだめだ」。思わず家庭用精米機をネットショップに注文しそうになったが、男が一度やり出したことである。右肩に氷嚢を当てタオルでしばる。そこからは、甲子園で連投に連投を重ねた後のエースみたいな姿での作業になった。

ちなみに昔の人は皆、玄米を食べていたというのは誤りで、5分づきか7分づき程度であったとしても、大抵杵をあててから炊いた。玄米は炊くのに火力がいるし、消化効率も悪い。強力な火力を備えた炊飯器と、米以外からでも容易にエネルギーを取ることのできる現代人だからこそ、玄米ご飯を食べられるのであって、過酷な戦国時代を生きる人々にそんな余裕はなかった。

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