横浜市によれば、「育児休業中の者」の中には申請時に「育休延長を希望する(利用調整基準のランクが最低になってもよい)」と申し出ていた人が741人、保育コンシェルジュ(保育利用の案内をする市職員)に問われて育休延長したいと答えた人が118人含まれているということです。この合計859人は、即座に保育を利用しなくてもよいと考えている人たちと言えます。
ただし、ほかの市区でも同様のことがあるはずなので、横浜市が突出してこの項目の割合が高い理由は不明です。「特定園を希望」して育休延長をする場合には「育休延長」にカウントされるため、その分が響いている可能性もあります。いずれにしても、育休延長期間には限界があるので、この方々も積み残された入園希望者であることには変わりはありません。
横浜市の「特定の保育園等のみ希望している者」は「利用できていない児童数」の36.7%で、調査対象100市区の平均(44.3%)に近い数字でした。横浜市は、江東区と同様、第1希望しか書かなかった人を「特定園希望者」として待機児童数からは除外しているということですが、通園の問題なのか、園庭等の問題なのか、質の問題なのかなど、特定園を希望する理由について調査する必要があると考えられます。
待機児童ゼロは達成したが…
10年前の2010年には、横浜市は待機児童数全国ワーストの1,552人を記録していました。その後の3年間で待機児童数をグングン減らし、2013年には待機児童数ゼロを達成し、世間を驚かせました。横浜市の待機児童対策は「横浜方式」と言われて、全国の自治体が参考にしました。
保育予算を増やし、企業による認可保育園新設を促進し、独自の認可外助成制度である横浜保育室や幼稚園の預かり保育補助による待機児童対策を推進し、保育コンシェルジュがこれらの保育への案内を保護者にていねいに行うなどがその内容でした。
こういった努力が、待機児童数の減少につながったことは間違いありませんが、同時に、独自の待機児童数カウント方法もゼロ達成の助けになっていました。横浜市が2011年、2012年から始めた「保護者が育休中」の児童や「保護者が求職活動中」の児童などを「利用できていない児童数」から差し引くことは、当時としては一般的ではありませんでした。横浜市のカウント方法のほうを「横浜方式」と呼んで揶揄した他自治体の首長もいました。
横浜市の認可の保育定員は、2010年には38,295人でしたが、2020年には70,015 人と倍増に近くなっています。保育の利用希望もおおむね倍増しており、これからもニーズ増と待機児童対策のせめぎ合いは続きそうです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら