東大、外資コンサルを経て、農家になった男

【キャリア相談 特別対談】 塩野誠氏×木村敏晴氏(上)

渡邉氏から学んだこと

塩野:前職のコンサルティングは、いわば日々企画業ですから毎日やることが違う。そういう会社から、ルーティンワークがある会社に入って、驚いたことはありましたか。

木村:コンサルでは、提案内容を作るのが仕事の主ですが、事業会社は、決定、実行するのが仕事の主。提案内容を決めるとか企画するのには一瞬しか時間を使いません。そういう意味ではだいぶ違いましたね。

塩野:「和民」の店舗でも働かれたんですよね。

木村:60日ぐらいかな、夜、週3日ぐらい居酒屋に入って働きました。思った以上に、当時の店長とは携帯ですぐ連絡をとって、本音が聞ける関係になれたと思います。

塩野:なぜそれが可能に?

木村:やっぱり一緒に汗を流したこと。それから当時はワタミも組織に階層も増えて来て、現場も経営との距離を感じ始めていたタイミングだったのかもしれません。

塩野:じゃあ店舗での経験も経て、その後はどんな仕事を?

木村:その後は幹部育成などです。主体的・内発的に、将来を描くプロセスを設計し、幹部だけで中・長期計画を作る機会を設けたり、社員が店舗を買い取って独立する社内独立制度を促進したり。それまではどちらかというと、企画は上から、現場はオペレーションをやりきる、というところがあったので、自主性に未来を模索するというか、内発的動機に基づいて行動するというか、そういうのをたくましくするにはどうしたらいいか、いろいろ試行錯誤していました。

塩野:創業者社長から学んだものは大きかったですか。

木村:はい。もちろん渡邉さんの考えを理解できるレベルには全然達していないのですが、学んだことは、めちゃくちゃ大きかったと思います。

たとえばこういうことがありました。お弁当をお年寄りに宅配する事業(現在のワタミタクショク)に関心があるということで、買収の検討してくれと言われました。僕が「ベースラインのキャッシュフローベースではこのぐらいの価値。シナジー含めるとこのぐらいの企業価値、だから買収金額はこのぐらいの金額が妥当」というコンサルなら誰もがやりそうな分析結果を持っていったところ、「そんなことはどうでもいい。会社を買うと決めたらもう向こうの言い値で買う。そうじゃなくてこの事業がワタミらしいのかどうかを知りたい」と言われた。現場で弁当をつくるシーン、届けるシーンがどういうシーンで、そこにワタミイズムが入っていったとき、お客様は喜ぶのか? 社員は生き生きできるのか? そういう話だけでしたね。でもそれは本質だと思いますし、その後、M&Aも成功しています。そういうことは勉強させてもらいました。

――リーダーとして、渡邊さんから学んだことはどういうところですか。

木村:そうですね、すごいことを成す人というのは、複数の能力があるという意味で希有なんだと思いました。たぶんスティーブ・ジョブズも、ひとりの人間の中にデザイン的なセンスと、コンピュータの知識の両方を同時に持っていたから、アップルが生まれたと思います。

美樹さんも、「行くぞ!」というリーダーシップや、みんなを動機づける力はすごい。それと同時にすごくクールな経営判断もできる方です。それがひとりの人間の中にあるのが、すごいと感じていましたね。

(構成:長山清子、撮影:大澤誠)

※ 後編は、6月13日(金)に掲載します

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