「記者にはデータを読み解く能力が必要だ」 WSJ編集局長が語るデジタル時代の戦い方(下)
ビジュアル性の高い記事が必須
――デジタル時代では、記者の働き方や役割も、紙時代とはずいぶん変わってきていますよね。
紙時代の記者の仕事は非常のシンプルだった。外に出て取材をして、夕方の決まった時間に原稿を入稿する。その後、新たな情報が得られれば、その分を足して翌日また記事をアップデートする、といった具合だ。しかし、今や記者はほぼ1日中働いているといっていい。
マルチメディアへの対応も求められている。WSJでは、すべての記者に取材と同時にスマホでビデオを撮影するだけでなく、自分の書いた記事について自ら話すことができるように求めている。記事のビジュアル性を高めることも非常に重要だ。
紙とデジタルによるメディア体験の最大の違いは、後者は本質的にビジュアルが主体になっている、ということだ。したがって、すべての記者はデジタル版を意識して、映像や音声、インタラクティブな図表や画像を駆使して、ビジュアル的に説得力があるコンテンツを作るよう求められている。
ネタをできるだけ早くつかんで、正確に伝える、というジャーナリストに求められる資質は変わっていないが、その記事やストーリーの伝え方はかつてに比べて大きく変わっている。
――記者や編集者はどうやってそのような技術を取得するのですか。
WSJでは数年前から「デジタル・ジャーナリズム(DJ)」と呼ぶ研修を始めている。記者や編集者はWSJの3大拠点(ニューヨーク、ロンドン、香港)の1つで1週間かけて、スマホによるビデオ撮影・編集法から、検索エンジンと相性のよい見出しの付け方、ツイッターなどソーシャルメディアの活用方法を学ぶ。また、シンプルな図表や画像の作り方と、それを記事の中でどう生かすかについても教えられる。この分野については、かなりの投資をしている。
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