「記者にはデータを読み解く能力が必要だ」 WSJ編集局長が語るデジタル時代の戦い方(下)

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パーソナル・ファイナンス欄のコラムニスト、ジェイソン・ズワイグ氏も人気が高い。また、ワシントンのジェリー・サイブ支局長については、これほどワシントンで何が起こっているかを知っている人物はいない、と言われるほど読者から支持を得ている。

デジタル化によってニュースの読まれ方が変わる中で、読者がこうした“ご意見番”を求めていることは間違いないし、今後も個人への関心は高まるだろう。幸い、こうした資質を持つ記者はWSJには多くいる。

購読者数を伸ばす余地はまだまだある

Gerard Baker●オックスフォード大卒。英イングランド銀行(中央銀行)のアナリストなどを経て、1994年英フィナンシャル・タイムス(FT)入社。94~96年は東京支局長として日本の金融危機を取材。ワシントン支局長などを経て、2002年に主席米国論説委員。09年WSJ入社。13年1月から現職

――実際、記者を雇う際に求める資質は。

WSJがほかのニュース機関と最も違う点は、読者のWSJに対する信頼感はほかのメディアより圧倒的に高い点にある。これは、WSJが経済紙だからというだけでなく、長きにわたって正確な情報を伝え続けてきたからだ。

現在、世の中は素性のわからないゴシップや、ニュースソースのハッキリしない話、価値のない話があふれており、正確、公平かつ正直で質の高いジャーナリズムへの関心はかつてないほどに高まっている。こうした中、私たちはあるストーリーに対してまじめにアプローチできて、きちんと正確な話を書くことができる記者を求めている。

今は(新聞業界にとって)チャレンジングな時代だ。誰もがこのデジタルプラットフォームをいかに有効に利用できるか試行錯誤している。私たちも過去2、3年、デジタル・ジャーナリズムやソーシャルメディアの活用など、いろいろなことにトライしているが、先はまだ長い。デジタル時代にジャーナリズムをどうやって提供していくか、というのが最も重要な課題だ。

今後は、スマホなどモバイルの活用もますます重要になってくる。現在、WSJは専用アプリを展開しているが、今後はよりWSJを読みやすくなるような別のアプリの提供も検討している。

――現在、WSJは紙とデジタル合わせて220万人(うち、デジタル版購読者は約90万人)の購読者がいますが、今後、購読者数やデジタルの割合はどのように変化していくでしょう。

購読者数はこれからも伸びていく、と考えている。全体像で見ると、紙の購読者数は今後も徐々に減ってくだろう。ただし、このペースはできるだけ穏やかなものにしたい。一方でこれを埋め合わせる以上のデジタル版の購読者を獲得し、米国内外で全体の購読者数を増やしていたいと考えている。デジタル版の購読者数アップには、スマホやタブレット端末などあらゆるプラットフォームで存在感を高めることが必要だ。

現在、米国の人口は3.1億だが、そのうちWSJの購読者は220万人に過ぎない。このことを考えると、米国でも購読者数を大幅に伸ばす余地がある。一方、世界で考えると、購読者数は米国よりずっと少ない。ジャーナリズムの質を保ちながら、こうしたニュースをきちんと提供する方法を確立すれば、米国外については購読数を倍に増やすことも容易だろう。

(撮影:梅谷秀司)

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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