「記者にはデータを読み解く能力が必要だ」

WSJ編集局長が語るデジタル時代の戦い方(下)

また、新規採用についてもデジタル技術を重視している。今の時代、記事をただタイプできるだけでは使いものにならない。ビデオを撮影できて、図表や画像を駆使して、ビジュアルの高い記事を作るというスキルは必須だ。

――米国ではデータを利用した「データ・ジャーナリズム」というのも非常にホットなようですね。ただ、ジャーナリズムは昔からデータを活用・分析してきていますが、過去とは何が違うのでしょう。

まず、過去に比べてデータの量が膨大だ。そして、その大量のデータの中にあるトレンドやストーリーを見つけ出し、正しく読み取って伝えるということが非常に重要になっている。 

たとえば、WSJでは最近、高齢者向けの医療保険制度「メディケア」について非常に興味深い記事を提供した。米国では近年、デジタル化のおかげで、メディケアの保険料がどこに支払われているのかを簡単に調べることができるようになっている。

そこでまず、関連当局にデータを公表するよう求めるところから始めて、どういった医者や医療処置が最も「稼いでいる」のか調べた。これは、比較的新しいデータベースの中から新たなトレンドを探るだけでなく、メディケアが濫用されていないか調べるといった意味も含めて、非常にジャーナリズム的な価値の高い記事になったと思っている。

専門性高い記者へ関心が高まる

――ただ、膨大な量のデータを読み込んで分析したり、重要なトレンドを見つけたりするには、非常に高度なデータリテラシーが必要ですよね。

もちろん。そこで、データ活用についても、記者や編集者がしかるべき機関で研修できるようにしている。スプレッドシートの使い方から各分野のデータの探し方、データに潜むトレンドの読み方まで学べる。

同時に、記者が自ら学ぶパターンも多い。たとえば、記者がある学区の学力について、ほかの学区と比べる記事を書きたいとする。それを証明するデータはどこにあるのか、また、関連する膨大なデータからどれを選んで、それをどう解釈するのか、を実践で学んでいる。

――WSJはたとえば、(昨年退職した)ハイテクライターのウォルター・モスバーグ氏など著名な記者も数多くいますが、デジタル時代にはこうしたスター記者の存在も重要なのでしょうか。

ほかの新聞に比べると、WSJはスター記者を育てることより、いい記事を提供することに力を入れてきた。主役は記者ではなく記事である、というスタイルは今も変わっていない。

しかしながら、デジタル時代になって、読者側がよりブランドや記者個人に注目する傾向が増えてきた。大半の読者は依然、WSJというブランドへの信頼感が高いから購読していると思うが、特定の記者の記事を読むために購読している読者も少なくない。

スター記者とは呼ばないが、WSJにもある分野への専門知識を有していて、読者から絶大な信頼感を得ている記者は何人かいる。たとえば、中国に長く住んだ経験があるアンドリュー・ブラウン氏は、多くの読者からの信頼を得ている中国報道の第一人者だ。

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