三井造船とキッコーマンを分析する アベノミクスによる円安で、恩恵はあったのか

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ところが、営業キャッシュフローという点では、その前の期より大幅に落ち込んでいます。キャッシュフロー計算書にある「営業活動によるキャッシュフロー」(15ページ)を見てください。

減損損失が、平成25年3月期は240億円、前期は81億円計上されています。工場や機械などの資産が思ったほどの収益を生まない場合、帳簿上の価値を減らさなければなりません。その減額分を「減損損失」と言います。

ただ、帳簿上の価値は下がりましたが、その分おカネを支払うわけではありませんので、これは「キャッシュが出ていかない費用」です。少し専門的になりますが、キャッシュフロー計算書の営業キャッシュフローを計算する際には、純利益(税金等調整前当期純利益)から計算をスタートさせているので、キャッシュが出ていかない費用である減損損失の分を足し戻すことを行っているのです。

もうひとつ、金額が大きいのは「負ののれん発生益」のマイナス296億円です。こちらは、実際にキャッシュが入ってきているわけではありませんから、先ほどの減損損失とは逆で、その分を営業キャッシュフローから差し引くことで調整します。

以上のことから、当期の「営業活動によるキャッシュフロー」は144億円となり、前の期の471億円より大幅に減少しました。

ここで、どれだけ効率的にキャッシュフローを稼いでいるかを示す「キャッシュフローマージン(営業活動によるキャッシュフロー÷売上高)」を計算してみますと、2.2%となります。この指標は、私の経験則上、7%あれば十分な水準だと判断していますから、三井造船の前期の成績は十分とは言えません。ただ、その前の期は8.2%ありましたから、当期の落ち込みは子会社買収による一時的なものだと考えられます。

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