――もともと「キカイダー」は「善と悪」をテーマにしていました。それはまさに、近年、ハリウッドで映画化されるアメコミ映画に共通するテーマのように思うのですが。
白倉:そうですね。図らずも現代的なテーマになりました。(ヒーローの苦悩などをハードボイルドなタッチで描き出し、後のバットマンシリーズに多大なる影響を与えたフランク・ミラーによる傑作コミック)「バットマン: ダークナイト・リターンズ」は確か1980年代に発表されたと思うのですが、あれもやはり日本のマンガやアニメに影響されたものです。それがようやくここ数年で実写映画の分野にも広がってきたのではないかと。これはおこがましい言い方ですが、ようやく向こうが追いついてきた、という気構えでいます。要するに、われわれがアメコミのヒーロー映画の後追いをするわけではないということです。
――たとえば「平成ライダー」ではダークなテーマの作品もありましたが、白倉さんが思う現代のヒーロー像とは?
白倉:難しいですね。仮面ライダーも含めた70年代のヒーローはだいたい「全滅系」と言いまして。ほとんどが生き残らない。特攻精神と言いますか、自爆だったり、最後が死で終わるものが多かった。
かつてのヒーローというものは、自分がヒーローになりたい、あるいはこんなヒーローがいてほしい、というようなあこがれの対象だったと思います。最後には義を尽くし、自ら命をなげうつ自己犠牲にあこがれていたのか? 70年代には、作り手側も、受けての側も、理屈ではない日本人としての美意識があって、それがたまたまヒーローという形を借りて描かれていただけだったような気がします。
だからといって、今、それをストレートに持ち込めるかというと、その美学とはまた違うような気がします。ヒーロー像がかつてと違ってきているなと思うのは、現代のヒーローたちが社会の秩序を守るために戦うのではなく、自分もしくは自分を含む集団のために行動するということ。あるいは極端に言うと、自分自身のポリシーや美意識を守るために戦っているとも言える。言葉は悪いですが、個人主義的なのが今のヒーローなのではないか、という気はしています。
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