『キカイダー』は日本人のカリカチュアだ 映画界を牽引する角川&東映「W伸一郎」に聞く

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海外に目を向けること

――これからお二方のように働きたいというビジネスパーソンにアドバイスをいただけますか?

井上:少し話がずれてしまうかもしれませんが、やはり映画を含めた映像を作っていると、どうしても日本国内だけに目が向きがちなのです。しかしKADOKAWAとしては、やはり海外のいろいろな国の方に作品を楽しんでいただきたい。特にわれわれが強みを見せるアニメやライトノベル、マンガなどはすでに国境を越えて、いろんな国で楽しんでいただいます。

わたしの次のステップは実写映画と考えています。日本の実写映画は海外輸出が難しいと言われていて。それはやはり日本が島国であって、日本だけでそこそこ経済が回っているからなのです。しかし、これからは日本の国の人口もどんどん減少していきますし、それだけでは食べていけなくなる。そうしたときにやはり実写映画も国境を越えて、世界中の人に楽しんでいただくようにならなければいけないと思うのです。

弊社の作品だと、最近では『貞子3D』は海外の何カ国かで買っていただいて、海外の方に楽しんでいただけました。ああいうキャラクターの強いものであれば、絶対にほかの作品よりは国境を越えやすい。そういったものは積極的に取り扱っていきたいです。トライアルというと言い過ぎですが、今やっている『キカイダー』でも勉強させていただこうと思っています。

そういう意味でビジネスパーソンに何かを言うとしたら、もうそろそろ発想を日本だけにとどめず、世界の人に喜んでもらえるようなものを作っていったほうがいいのではないか、ということですね。

――白倉さんからもメッセージをいただけますでしょうか?

白倉:メッセージということではなく、僕が最近ずっと考えていることで申しますと、10年間というスパンについてです。「十年一昔」という言葉があるように、物事は10年でガラっと変わってしまう。日本経済全体もそうなのかもしれないですが、その繰り返しです。

たとえば東映で言えば、「チャンバラ時代劇」がものすごいブームをもたらした。これが10年間。そこから任侠映画、そして実録ものといったいわゆる「やくざ映画」が人気を博したのが約10年。そして今、「仮面ライダー」「スーパー戦隊」「プリキュア」「相棒」といったシリーズものが好況を博しているのもここ10年の出来事。だからといってこの路線がもう終わる、ということではないですが(笑)。

10年という歳月で物事はよくもなるし、悪くもなる。また、今が悪かったとしても10年かければ変えることができる。あぐらをかいていれば、10年後には今せっかく持っているものさえも、すべて失ってしまう。かつての「チャンバラ時代劇」や「やくざ映画」のようになってしまうことだってありうる。それは自分たち自身の努力だけでなく、周りの環境と密接に絡んでしまうので、自分の力でどうすることもできないのですが。それでも不断の努力をしていかなければならない。それによって、10年後にはまた違った世界が見えてくるのではないかと思うのです。

先ほど、東宝さんが独り勝ちだとおっしゃいましたが、その状況というのも、彼らが10年間、本当に歯を食いしばって耐え忍んだ結果の産物だと思います。突然、今日の東宝さんの状況が出来上がったわけではない。劇場や企画部、調整部、宣伝部など、各セクションがものすごく頑張った成果ですよ。そして彼らは今でも天狗になっていない。まだまださらに先へ、不断の努力を惜しまない。それはたまたま手に入れたものではなく、ちゃんと実力をつけて手に入れてきたものだからです。

だから今後、やはりわれわれは彼らを見習うべきであると。10年後は見ておれ、とね。いや、これは別に打倒東宝と言っているわけではないですよ(笑)。ただし、10年先を見据えて、きちんと努力をすること。将来のために今、手を打っていくことが大切。それはビジネスだけではなく、どの分野でもすごく大事なことだと、あらためて今、思っています。

(C) 石森プロ・東映 (C) 2014「キカイダー」製作委員会
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