キーワードは2つある。「課題の難易度」と「メンバーとの関係性」である。
初めて会う学生同士で、最大1日以内で議論して、結論を出すような課題の難易度であればオンラインでの完結で問題はない。一方で、初めて会う学生同士で、解決に数カ月を要するような難しい課題を課すと、必ずと言ってよいほど「問題」が発生する。
まず、「個々のモチベーションの低下」が起こる。いろいろなことを抱える中で、答えがなかなか出せない課題に向き合うことは、極めて大きなストレスになる。実際に、そのストレスによりプログラムから離脱する学生も少なくない。
「仲間との不協和音の発生」もある。すでに対面などで十分な関係性があれば、また事態は異なるものの、この4月に入学した学生は、部活やサークルのメンバーに対面で1度も会ったことがないということが常態化している。グループで関わる時間が長くなれば、必然的に意見の対立やコミュニケーションのズレが生じる。
また、チーム内にモチベーションのばらつきが発生し、そのことで、頑張っている学生のモチベーションがさらに減少するケースも多数ある。その不協和音の発生を、学生だけで解決していくのが困難を極めることは言うまでもなく、学生団体の代表から部活・サークルの運営について相談を受けることも多い。
「危機」を乗り越えるうえで「オンライン」には限界
このような「危機」を乗り越えるうえで「オンライン」の形式には限界がある。やはり、逃避不可能な環境で、直接意見をぶつけあい、励まし合い、相互にモチベーションを高めるきっかけを定期的につくることが重要になってくる。ここについては、今後さらに科学的な研究が必要にはなってくるものの、この半年間さまざまなプログラムを産官学連携で実施してきた中で、「課題の難易度」と「メンバーとの関係性」によっては、対面での議論の場を意図的につくり組み合わせすることでその効果が高まることを、少ない事例であるものの確かに検証している。
コロナ禍において、高等教育の最大の問題点は何かと問われれば、「難易度の高い課題に、チームの不協和音を乗り越え、向き合う機会・経験」が、大きく減少しているという点である。大学の学園祭は事前の打ち合わせも含めてオンライン化。留学などで、文脈の異なる他者と長期で関わる機会も喪失している。一部の運動系の部活やサークルはまだしも、長期プロジェクト型の学生団体の活動の多くは停滞し、参加学生のモチベーションが大きく低下している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら