陸上競技のメタファーで語るのであれば、100m走のような短距離型の、その場限りのグループワークや課題に取り組む力も大事だが、実社会ではその関係が継続し長期にわたって続くため、マラソンのような長距離型の力も必要である。もっと社会の現実に即していえば、価値観の合わないような他者とも関係を構築し、課題に対して長期的に協働して、成果を出していく力が求められている。なぜなら、社会は「点」の活動ではなく、「線」の活動が中心にあるからだ。
あえて一言でいうならば、「リーダーシップを育む」機会が大幅に減少しているといえる。社会の問題はより複雑化しており、さまざまな人との連携や共創が不可欠であり、そのためにはその促す機能としての「リーダーシップ」が必要である。ただ、「リーダーシップ」は講義形式で教えることには限界があり、長期での「実践」を通じて、他者との「葛藤」や「衝突」を乗り越えながら、身につけていく能力・スキルである。
1人では解決できない課題を、チームで解決する
では、「リーダーシップ」に代表される、多くの人と関わり、1人では解決できない難度の高い課題をチームの力で解決するような「機会」「経験」を、ポストコロナにおいて、産官学が連携して、どのようにして提供していくのか。
形式を「対面」にするか、「オンライン」にするかという方法論の議論に終始してはならない。前段でも述べたように、「テクニカルスキル」や「知識習得」を目的にするのであれば、むしろ「オンライン」のほうが手法として効果が大きい場合もある。
大事なポイントは、何を対面で教える、育むのか、その「目的」である。社会で人間関係を構築し、1人ではできないことを、組織やチームを構築して成すという人類にとって不可欠な能力を、どう育み、どう磨いていくのか、ここをおろそかにした際の、未来へのしっぺ返しを考えると戦慄すら覚える。だからこそ、産官学が知恵を結集して向き合わなければならない、大きな社会課題といえる。次回からは、人づくりの最先端事例編に入っていきたい。
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