オンライン授業で大学教育の質はどう変わるか 労働経済学者の安藤至大・日本大学教授に聞く

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コロナ禍で急速に一般化したオンライン授業は高等教育の質を上げる好機にもなっている(写真:Elnur /PIXTA)

――コロナ禍によって大学の授業は様変わりしました。

私の勤める日本大学経済学部でも今年5月からの前期は、完全にオンラインにシフトした。少人数のゼミでは、ビデオ会議システム「Google Meet」や「Zoom」を使って学生と教員がつながり、オンタイムで授業を行っている。一方で、100人を超えるような大人数授業ではオンデマンド方式、私の場合には講義用ビデオを作成してYouTubeにアップし、学生はそれを観て学習し、さらに課題をこなす形で進行している。

――講義用のビデオはどのように作っているのですか。

90分の授業に対して、45~50分程度のビデオを作成するのが一般的だ。学生の視点からは、普通の授業なら90分といっても板書や機器を操作する時間なども含まれ、さほど苦痛ではない。しかし、オンデマンド型のビデオを90分間ぶっ続けで観るのはつらい。そのため、45~50分のビデオ中、10分程度ごとに間を作り、そこに課題をはさんだり、考える時間を入れたりしている。そのすべてを合計して1回90分の講義となる。

大学は、オンライン教材の最低ラインとして音声を吹き込んだパワーポイント形式を求めており、「それ以上のことは各先生に任せます」というスタンスだ。私のようにスライドをベースとした動画を作る教員も少なくはない。

講義1回分の動画作成は丸一日かかる

――動画を作るのは大変ではないですか。

とても大変ですよ(笑)。スライド作りだけでなく、収録時にも撮り直しがあり、収録の時間はビデオの長さの2倍は優にかかる。さらに動画編集作業ではその2~3倍の時間が必要で、講義1回分の動画を作るのに丸一日をかけている。今学期限りのためにこれをやるのは割が合わない。普通の授業のほうがまったく楽だというのが、ほとんどの教員の感想だろう。

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