「GoTo」は日本人の"損得勘定"を鈍らせている "トリキ錬金術"などトンデモ論争多発で考える

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y.uemura / PIXTA(ピクスタ)

なにやら騒動が絶えない「GoToキャンペーン」の成り行きに注目している。

10月にスタートした「GoToイート」は、飲食店で298円などの安い1品だけを注文して1000円分のポイントを受け取る“トリキ錬金術”なるワザが編み出されるという、トンデモ騒ぎを巻き起こした。続いて、「GoToトラベル」で予算を使い切りそうな予約サイトが割引上限を引き下げると言い出すといったひと悶着もあった。

どちらも政府が「それはいけません」と中に入り、対策を講じる始末。制度の立て付けを見れば、どちらも最初から予測できたことだけに苦笑するほかない。

この騒動の根幹にあるのは「人がトクしているのに、自分だけが損したくない」という心理だろう。そもそも東京を除外したままトラベルを見切りスタートしたところから「税金を使っているのに不公平じゃないか」という不満が蔓延していた。

さらには「旅行に行く余裕のある金持ちばかりが恩恵にあずかるなんて不公平だ」「なぜ一部の産業ばかりが補助されるのか不公平だ」「医療関係者は旅行どころではないのに不公平だ」という、「不公平」のオンパレード。人とは「自分が他人と同等の恩恵を受けられない不公平」に過敏な生き物だという証明だろう。

実はGoToキャンペーンには、人の心理を煽る仕組みがそこここに隠されている。結果的に、人はこのキャンペーンに嬉々として参加しようとし、お金を落とす。「ついお金を使ってしまう」心理の好例として、それを分解してみよう。もしかすると、不公平だと怒りつつも冷静になれるかもしれない。

「せっかくなら普段より高いホテルを」の心理とは

まず、「税金使っているのに不公平だ」についてだが、これは間違っている。トラベルは「甚大な被害を受けている観光業について、飲食業、イベント・エンターテイメント業などを支援する取組に併せて、官民一体型の需要喚起キャンペーンを実施」(国土交通省の資料より)、イートは「感染予防対策に取り組みながら頑張っている飲食店を応援し、食材を供給する農林漁業者を応援」(農林水産省のHPより)するのが目的だ。

これは税金の配分を政府がそう決めただけ。国民に割引サービスをしようという事業ではもともとない

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