「GoTo」は日本人の"損得勘定"を鈍らせている "トリキ錬金術"などトンデモ論争多発で考える

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一度、「イート」で来店したら最後、このポイント無限ループに足を踏み入れるかもしれないのだ。もし、あなたが「保有しているポイントの期限がもうすぐ切れます」というECサイトからのメールを見ると是が非でも使わずにいられないタイプなら、「イート」を予約する前に覚悟したしたほうがいい。そのポイントは「トク」かもしれないが、ひょっとすると浪費の種にもなる

全員が手にしている「トクする権利」はタチが悪い

世の中にはさまざまなマーケティング手法があるが、こう見るとGoToにはお金を使わせる仕組みがふんだんにちりばめられているとおわかりだろう。すべて計算ずくだとすれば、さすが頭がいい官僚が考えた施策(本当にそうかは知らないが)と感心する。

もっと肝心なのは、私たち全員に「トクする権利」を提示したことだろう。利用できる資格もなく、誰でも旅行に行くとトクですよ、予約して飲食店に行くとトクですよ、と国民全員に知らせた。先に書いた“保有効果”の働きで、せっかくトクする権利があるのだったら、使わないのはもったいないじゃないかと考える

子育て世帯に限りますとか一定以下の所得の方のみですと言われれば「どうぞどうぞ」と平静でいられるのだが、全員公平に権利がありますと聞くと、「みんながトクしているのに自分だけが損するのは耐えられない」と感じてしまう。損得勘定というものが人を惑わし、“不要不急の”消費を煽られるのだ。

最初は一部業界の救済目的だったGoToキャンペーンは、どうも最近は単なる消費喚起策に変容しつつあるようだ。トラベルで受け取る地域共通クーポン券が、コンビニでもデパートでも家電量販店でも使えるのが、その象徴だろう。制度の準備不足や欠点はともかく、「人にお金をついつい使わせる」ことには成功しているように見える。次に来る「GoToイベント」でも、予想外の“損得ドラマ”が起きると期待したい。

松崎 のり子 消費経済ジャーナリスト

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まつざき のりこ / Noriko Matsuzaki

20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
【消費経済リサーチルーム】

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