「GoTo」は日本人の"損得勘定"を鈍らせている "トリキ錬金術"などトンデモ論争多発で考える

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今回は政府が慌てて、予算の再配分を行うと発表したが、「もしかしてまた同じ事態が起きるかも」という疑心暗鬼を植え付けるには十分なアクセントになっただろう。コロナ不安の中、旅行に行くかどうか迷っていた人も強力に背中を押されてしまったはず。もし、これも仕掛けられていたとすれば、GoTo恐るべしである。

トラベルに続いて始まった「GoToイート」は、飲食店と生産者を応援するための事業だ。オンライン飲食予約の利用によるポイント付与、および登録飲食店で使える25%のプレミアム付き食事券が消費者側のメリットで、早々にスタートしたポイント還元に注目が集まった。

昼食時間帯(6:00~14:59)は500円分、夕食時間帯(15:00~翌5:59)は1000円分が、人数分(1回の予約あたり最大10人まで)受け取れるというもの。1万円のディナーでも1000円のディナーでも同じ1000円分という「定額制」だったため、トラベルとは異なり単価が「安い」店が注目されることになった。

そのため、鳥貴族のような低価格メニュー店で1品だけオーダーして差額ポイントを稼ぐという、なんともセコイ手口が登場したわけだ。

還元されるのが予約サイト限定のポイントだという点が、「イート」事業のキモといえる。このポイントは現金化や他サイトとのポイント交換はできず、同じサイトに限り次回の予約時から使えるというものだ。しかも利用期限がある。付与されたポイントは、2021年3月末までに使わなくてはならない(サイトごとに付与のタイミングも、翌日以降もあれば翌月もありとバラバラなので、使い切るためには先に調べておくほうがいい)。

もちろん「おトク」な面もあるが、最低2回は飲食店を予約し、そこへ出かけなくてはいけない。つまり「トリキ錬金術」を実現するには手間も時間も使うわけで、ご苦労様だと思う。

とはいえ、せっかく受け取ったポイントを無視できる人はそうそういない。いったん手にしたものに大きな価値を感じる“保有効果”の心理が、「必ず使え」と誘惑する。しかも、使用期限があり、使わないと最後は失効してしまう。ゆえにポイントを使うために、さらに次の飲食店で消費をする。

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