「GoTo」は日本人の"損得勘定"を鈍らせている "トリキ錬金術"などトンデモ論争多発で考える

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だから、「旅行や飲食にたくさんお金を使える余裕のある人に,もっと使ってもらおう」が本筋であって、「隣の家ばかり割引の恩恵を受けている」のではなく、「政府にまんまと乗せられて、たくさんお金を使わされている」と思ったほうがいい。しかも、「わざわざ普段よりも高い宿を選んで」くれて。

ご存じのように、GoToトラベルの割引は半額といった「率」で計算される。どうせなら高い宿に泊まった方が、割引される実質金額は大きくなる。いわば、日ごろは9800円程度の服を買っている人が、50%オフと聞いて普段は買わない4万円の服を手に取る心理と同じだ。

しかも、「宿代でトクしたんだから」と、そのぶん料理のグレードをアップしたり、ちょっといいランクのお酒を頼んだりしがちだ。「安くなった」という安心感で、他で余計にお金を使ってしまう。これは、大変結構なことだ。トラベルの趣旨は「観光地全体の消費を促進(国交省の資料より)」なのだから。

一般的にも高級宿に泊まる方が気分も上がり、消費額の基準も上がるもの。ブランドショップに入ると、値札を見ているうちに10万円近くする小物が当たり前に感じてしまうあれだ。

高級宿はルームサービスの金額もそこそこするだろうが、まあこんなものだろうと思えてくる。普段は夜食用にカップ麺を買ってくる生活だとしても。だから、お手頃宿より高級宿に泊まってもらうほうが消費効果が上がるのだ。GoToトラベル事務局がそこまで意図していたとすれば、なかなか深い。

テレビ通販の「今から30分以内限定で」手法

さらに、今回の一部予約サイトの“割引上限の引き下げ宣言”も、人々を浮足立たせた。これまで最大で1万4000円割引のはずが3500円までになると言われたら、それは焦る。

焦ってどうするかといえば、まだちゃんと1万4000円割引しますよという代理店に殺到する。これは、テレビ通販でよく使われる手法と同じといってもいい。「今から30分以内にお電話いただいた方限定で」というあれだ。おトクなのは今だけかもしれない、今ならまだ間に合う、そう感じてしまうと人は冷静な判断が鈍る。

旅に行くかどうか決めかねていた人も、かなり慌てるのではないだろうか。のんびり構えていたら割引の恩恵にあずかれなくなるかも。とにかく、何でもいいから予約しておこう――と。サービス期間や時間を限定されると判断は甘くなり、特に期限が迫っていると感じれば余計に冷静なジャッジができなくなるものだ。

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