大坂なおみに「共感する女性」が口々に語る理由 彼女が訴えているのはBLM問題だけではない

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そして、とても「人間らしい」大坂は、彼女の行為を批判する人たちに反発した。厳しく批判されても、その批判を受け止めながら、それが自身の目的の追求や達成の妨げにならないよう、権威者に対して自身の立場を貫こうという姿勢があった。

その姿を見て多くの人、特に日本人女性は、自分たちを取り巻く世界でいったい何が起きているのかという理解を深めたのだ。「大阪なおみさんが日本に与える影響はとても大きいと思う」と、東洋大学でグローバル・イノベーション・スタディーズを学ぶ立川夏帆さん(21)は話す。

「彼女はテニスプレーヤーとしても、大坂なおみさん自身としても多くの人から愛され、応援されている。人種差別を訴えるために、試合を休んだり、被害者のマスクをつけたりすることは、日本人がアメリカで起きている現状を知り、理解するのに大きな影響を及ぼす。日本人でもある、なおみさんの行動を見ると、今の状況がどれほど深刻で、悲惨なことであるかを知らされる」

同じく東洋大学の伊藤彩さんも「大坂選手のBLMに対する姿勢は、日本人にとってポジティブな結果をもたらすと信じている」と話す。

「日本ではBLMや男女間の不平等に気づいていて変えたいと願っている人が他国に比べて圧倒的に少ない。メディアもそういった問題をなかなか取り上げない。こうした中で、世界的にも有名な大坂選手のBLMに対する姿勢は少なくとも何人かの日本人がこのことを深く考えるきっかけになるだろうし、日本のメディアでこの問題が取り上げられることが増える」

BLMに関する報道が変わった

日本に暮らす天然パーマの人のコミュニティ「サマリー・ジャパン」を運営する矢島夏実さん(27)も、メディアによる報道の仕方が、日本人のBLMに対する受け止め方のカギを握ると話す。

これを人権問題と受け止めるのか、黒人に対する残酷な扱いは彼らがやった何かへの正当な報いだという、偏っていて、非人道的な考えを持ち続けるのか──。大坂の存在は、状況をポジティブに変えうる可能性があると矢島さんは見ている。

「かつては、BLMはその背景よりも、暴動など過激な部分ばかりが取り上げられていたことで、日本人の印象はあまりいいものではなかったように思う」と、アメリカのフロリダ州立ベスーン・クックマン大学の卒業生でもある矢島さんは言う。

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