最強牝馬が惨敗「凱旋門賞」に学ぶ勝負の怖さ GⅠ14戦11勝の歴史的名牝を襲った不運

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日本勢では、昨年春から欧州に滞在し、転戦してきたディアドラ(牝6、栗東・橋田厩舎)が参戦した。コロナ禍の中で日本国内からの遠征が事実上不可能な状況だった。ディアドラが欧州にいて凱旋門賞に出走したからこそ、われわれは国内で馬券を買ってレースを楽しむことができたのだ。

昨年ナッソーSを制し、日本調教馬で牝馬として初めて欧州の中距離GⅠを制する快挙を達成。今年はコロナ禍で調整が難しい中で転戦を続けたが、連覇を狙ったナッソーSでは伸びを欠き、最下位7着に敗れた。

そこから立て直し、凱旋門賞出走は欧州滞在の集大成の一戦となった。スペンサー騎手とのコンビで臨んだレースは最後方から差を詰めたが8着。

橋田満調教師は「粘土質で脚にまとわりつくような重たい馬場。 レースは騎手に一任した。道中はスムーズに走れていたし、最後の直線に向いて手応えも良かったが、伸びきれなかったのはこの馬場をこなせなかったということだと思う。

ディアドラは最後まで一生懸命走っていた。 日本の馬は少しの雨ならこなせると思うが、これだけの雨量があると訓練と適性が求められる。フランスの重たい馬場はイギリスとは別物で特殊な馬場だった」と今回の挑戦を振り返った。

1969年のスピードシンボリから半世紀を過ぎて、日本馬は延べ27頭目の挑戦だった。日本競馬界悲願の凱旋門賞初制覇は持ち越しとなった。

武豊騎手はリスク覚悟で挑戦表明

武豊騎手の凱旋門賞への挑戦表明は、衝撃を感じるものだった。海外で騎乗すれば2週間の自主隔離期間が必要だ。それでも武豊騎手はフランスへ向かった。それだけに今回のジャパンの出走取り消しは無念だったはずだ。

ジャパンは、武豊騎手を全面的にバックアップするキーファーズの松島正昭氏が、世界的競走馬組織のクールモアグループと共同所有で購入。陣営から騎乗のオファーを受けて実現した。

「自分の馬で武豊騎手に凱旋門賞を勝ってもらうのが夢」と公言する松島氏の熱意に応えて、武豊騎手はリスクを覚悟のうえで凱旋門賞への挑戦を選択した。

松島氏はホームページの「キーファーズサロン」で無念の心境を表明した。「このような事態となり大きな失望を感じています。凱旋門賞騎乗のため、この様な状況下にも関わらず並々ならぬ意欲を見せて渡航してくださった武豊騎手には大変申し訳ない気持ちでいっぱいです」と謝意を述べた。

ファンに対しては「皆様には深くお詫び申し上げます。クールモアやオブライエン調教師とは、この悔しさを喜びに変えようと話しました。ここでめげず、今後とも夢に向かい邁進致しますので、あたたかく見守って頂けますよう、よろしくお願い申し上げます」とコメントした。

武豊騎手は、2006年に自信を持って挑んだディープインパクトで3着(のちに失格)に敗れたことを「今も夢に見ることがある」というほどで、悔しさを忘れたことはない。「凱旋門賞はいつもそこにいたいと思うレース」と強い思い入れを語る。

「出場することが目標。勝つことは夢」と語る。51歳になった武豊騎手は世界のレジェンド的存在でもある。次のチャンスを期待したい。

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