新型コロナウイルスは最初の感染ピークが過ぎたと見られる。緊急事態宣言は解除された。それでもまだ安心はできない。筆者の住む福島県の指針は6月18日まで首都圏1都3県および北海道への不要不急の往来をできるだけ控えてほしいと要請が出ている。筆者は4月11日から5月3日まで無観客で開催されたホームの福島競馬を取材したが、通常なら毎週出張して取材する春の東京のGⅠシリーズをテレワークで迎えた。
今春のGⅠシリーズはふとしたきっかけから日曜日の午後、ビデオ会議システム「Zoom」を使いつつテレビで観戦している。
親交のある北海道文化放送アナウンサーで競馬実況を務める加藤寛さんの呼び掛けで、馬産地を中心に北海道で長年取材活動を続けるライターの村本浩平さん、札幌競馬場の近くで生まれ育った筋金入りの競馬ファンでもあるNTTドコモの大西智之さんと4人でやり取りをしながら競馬を見ている。
参加者同士の情報交換ももちろんだが、パドックでの馬の気配やレース展開などもリアルタイムで会話しながら見ることができるのは思っていた以上に楽しい。
こうしたZoomミーティングや、グループLINEなどを使って仲間同士で競馬を楽しんでいる人も多いかもしれない。これも無観客ならではのことだろう。競馬は仲間同士でいろいろ話しながら予想して、馬券を買うときは自分で決断するというのが醍醐味でもある。やはり過程の会話が楽しい。そういう意味では長年競馬を取材する仕事をしていただけに、久々にファンの気持ちをあらためて思い起こさせてもらえた貴重な体験だった。
筆者は春と秋に福島テレビの競馬中継で解説を務めている。今春、解説者は競馬場の現場にいたが、アナウンサーは本社のスタジオからリモート中継した。北海道文化放送も6月13日から始まる函館競馬の中継は、解説者が函館競馬場、アナウンサーは札幌本社のスタジオからリモート中継となる。
無観客競馬は歴史的なレースが続いた
日本中央競馬会(JRA)は2月29日から無観客開催を続けている。この間、騎手や厩舎関係者から感染者が出ていないことには頭が下がる。無観客開催が続けられるのは関係者の努力があるからだ。
無観客での競馬開催はJRAの前身となる日本競馬会時代、太平洋戦争時の1944年に能力検定競走として実施したケースがあったが、1954年のJRA発足以降では初の無観客開催だった。今年の日本ダービーは76年ぶりの無観客という記述があらゆるところで見られた。2020年・令和2年の中央競馬は無観客の歴史的な開催だったと後世になって振り返る年になるのだろう。
そして、春のGⅠは内容的にも歴史的なレースが続いた。今年の春競馬はそれぞれの人の記憶に強烈なインパクトとともに刻まれることになった。
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